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「すっかり日が暮れたわね」
「関係ねぇだろ」
「それもそうね。どちらかというと好都合なんだけど」
あれから汽車に乗ってドイツ北部の町、ミッテルバルトの地に降り立っていた。
二人はとりあえずコムイに言われていた森をめざす。――『帰らずの森』と呼ばれるその森に。
「あの村へ行くのかい?あそこは昔からイヤな噂のある村なんだよ」
途中道を聞いた老婆はそう言う。
レティシアはずいぶんと嫌われてるのねぇと心の中で呟いた。
「イヤな噂?」
「あぁ。『魔女』が棲んでいて、道に迷った子供を捕まえ、喰っちまうのさ」
「あらあら。魔女がこの世にいるのなら是非お会いしたいわね」
肩をすくめていうレティシアは全く信じてないようだ。
しかし老婆は真剣に言い聞かせるようにいった。
「悪いことは言わない。『魔女の村』に興味本位で近づくのはやめな」
「ダンケルン村に行くには一本道があると聞いてるんだが」
全く聞く耳を持たない神田とレティシア。
止めているのにもかかわらず道を聞く。
もう止めても無駄だと諦めたのか深々と老婆はため息をついた。
「はぁ…しょうがないね。あそこに『ダンケルン村』って立て札があるだろう?
あの道をまっすぐ行って森を抜ければ、村に着くよ」
「わかった。手間を取らせたな」
「ありがとう」
聞く耳をもたない割にはきちんとお礼を言って二人は森へと向かう。
老婆はその礼儀正しさからどうしても心配であり、二人の背に声をかけた。
「でもあんた達、本当に行くのかい?」
「あぁ」
「あの村は最近、人が帰ってこないって言われてるんだよ。
つい二日前にも三人組の男が森に入っていったが、戻ってきていない」
「その三人を探しに行くんだ」
「(あまり気はすすまないけど、ね)」
「ああ…」
老婆の表情に諦めが浮かんだ。
きっと帰ってきていない男たちはすでに死んだと思っているのだろう。
レティシアはどうしてそんなに行かせたくないのかしらねぇ、と思う。
所詮は他人。そこまで心配しなくてもいいと思うのだ。
「それは私が冷たいだけかしら…ね」
その言葉は誰にも聞こえていなかった。
老婆は戻ってこられるといいがね、と呟いたのでレティシアも呟き返した。
「戻ってこないわけないでしょ」
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