なぜか行く途中に邪魔する者は現れず、二人は谷にかかる石橋を越え、村の入口に立った。
荒れ果てた村。さっきまでいた街とは大違いだ。



「うわあ、何かおどろおどろしい村ですねえ」

「おどろおどろしいって昔の日本では“仰々しい”って意味だったのよ。一応恐ろしいって意味もあるらしいけど」

「あれ、そうなんですか。でもさすが『魔女の村』って言われるだけありますね。
これは確かに何か起こってもおかしくないですよ」



ゴスはびくびくと怯えて神田の後ろに隠れる。
…うーん、体は大きいけど、どうやら肝っ玉は小さいようだ。
よくファインダーとして生きてこれたな、と感心すらしてしまう。

村は不気味なほど静かで、人の気配すらしない。



「資料ではたしか、家畜を飼ってたりしている家が多いとありましたけど、人どころか動物の声もしないですね…」

「それにしても静かすぎるわね。夜だから…ってわけじゃなさそうだし」

「もしかして村人全員、消されていたりして…」

「どういう意味だ?」


鋭く言う神田。レティシアは肩をすくめるだけ。
ゴスはびくっと肩をふるわせ、怯えたような顔をする。


「ほら、この村って魔女伝説があるじゃないですか。だから、」

「くだらん。とにかく確かめるぞ」

「そうね。それが一番てっとり早いわ」



気配をさぐるがないといってもいいほどだ。

アクマが気配を完全に消せるとは思えない。でも実際的には感じられないのだ。
それが一番の謎だ。…もしかして先ほど逃げたアクマはこの村にはいないのだろうか。

深く考えれば考えるほどわからないことだらけで、レティシアは首を小さく傾げた。



「あ、神田さん、返り血拭いたほうがいいですよ。そんな顔だと村の人達が怖がりますよ」

「返り血を浴びなくてもユウちゃんの顔自体に怖がると思うわ」

「いつも思うんだがオレに喧嘩売ってんのか?」

「あら失礼な!私はユウちゃんで遊んでいるのよ!」

「よし。よくわかった。そこでじっとしてろよ。今すぐお前を微塵切りにしてやる」


つーかオレで遊ぶ方が失礼じゃねぇか!!


「微塵切りにするならネギの方がいいわよ〜」


ユウちゃんならネギ、綺麗に切れそうね。もちろん六幻を使って。


「六幻はそんなもんを斬るモンじゃねぇ!」

「わかってるわ」

「あの〜…神田さん、拭かないとアクマの血のウィルスに感染してしまう可能性がありますよ」



夫婦漫才のような会話に入り込んでいいのかと困りながらも、ゴズはハンカチを差し出した。
私より女らしいわねと感心するレティシア。(それも如何なものか)

しかし、神田は「そんなもの、いらん」と言ってぐいっと乱暴に血をぬぐった。



「男らしい〜ユウちゃん」


からかうようにクスッと笑い、レティシアは手を少し広げた。―*降ってきた雨を感じるために。


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