「雨が、降るわね」



小雨が降る中、神田とレティシアは村の奥に入っていく。

何も聞こえない。
雨の音、自分たちの息、水がはねる自分たちの足音以外、何も。



「うう、本当に魔女の棲む村っぽいですね」

「…そうかもしれないわね」



神田もレティシアもここまで人の気配がないと驚きに近い感情を持つ。
ゴズが「どこか適当な家を訪ねてみましょうか?」と提案した瞬間、かすかだが物音がした。
神田とレティシアは同時に同じ家を見つめる。

あの家……あの家からかすかに物音がした……



「どうしたんですか?」



ゴズが不安げに聞いてくるということは神田とレティシアにしか聞こえてなかったということなのか、それとも音に対して神田とレティシアが敏感すぎるのか。
ともかく音がしたということは、人かアクマか動物か…何かがいるということは間違いない。

神田が無言でその雑貨店と称されている家に近づくと、レティシアもその後を何も言わずについていく。
ドアに手をかけると不用心なのか鍵は開いていた。



「すみませーん、誰かいますか?」



ゴズが恐る恐る中に声をかける。
すると突然カウンターから人が現れた。

この村で初めて見た、人間が。

なぜか出てきただけで「ひぃっ!」と情けない声で驚くゴズ。
大げさね、とレティシアは思ったがその容姿からしてお化けに見えないこともない、とも思っていた。



「ここの店主か?」

「は、はい。そうです」

「黒の教団の者だ」



神田は自分の団服のローズクロスを指さした。
このローズクロスの権力は広く広まっているものであり、公共施設であれば大体察してくれる。
しかしここはドイツの片田舎。この田舎でそれが通じるのかしら?とレティシアは思ったのだが、その予想は当たったようだった。

老人は困惑しつつも仰々しいマークに「お偉い方のようで…」と返していた。



「ここへはどうして…」

「最近、この村に行った人が戻ってこないと噂を聞き、調査に来ました。
『帰らずの森』なんて呼ばれているらしいですね」

「そうなんですか?」

「あら自覚なし」



あまりの無反応さに神田とゴズは思わず顔を見合わせた。
レティシアも少し驚いているようでまじまじと老人を見つめていた。


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