主人に案内されて神田は狭い部屋を見渡した。
レティシアはただ小さな窓から降り続く雨をぼんやりとみつめている。

するとドアがノックされ、ゴズが入ってきた。



「店主さんから毛布もらってきましたー
あ、レティシアさん、女性なのに同室ですみません」

「別に気にしてないわ」



窓から眼を離さずに一言だけ。
そんなレティシアの態度にゴズは気にせず言葉を続けた。



「神田さんかレティシアさん、ベッドをどうぞ。どうせ俺、そのベッドに入らないんで」

「…お前使え」

「いいわ。ユウちゃん使って」



どうせ眠れないと思うから。

心の中だけでそう呟いたレティシアに神田が怪訝そうに眉をひそめた。

いつもなら『あらさすがユウちゃん。優しいのね』とか言うはずだ。
なのに今日はオレに譲るとまでいいだした。



「どうした?」

「何が?」

「…いつものお前らしくねぇだろ」

「そうかしら」

「あぁ」



単調的な受け答え。しかし、ゴズは口を出さずにいる。
レティシアの雰囲気はやはりいつもと違って神田には見えない壁があるように感じた。



「きっと雨のせいね…」



それだけ言って目を閉じる。
これ以上の会話はないと判断したのか神田も何も言わず、部屋が沈黙で満たされた。

その沈黙に耐えきれなかったのか、ゴズはわざと明るい声で話し始めた。



「…とりあえず人がいてよかったですね!」

「まぁな」

「本当に誰もいないのかと思っちゃいましたよ。ずいぶん静かに暮らしているんですね、この村の人たちは」

「そうだな…」


神田は一言しか返さない。
いつもなら無視するが、今日はレティシアのことが気になるのか上の空でも返事をしていた。

ゴズはそんなこと気にしないとばかりに言葉を続ける。



「でもがっかりですね。命がけで調査に来たっていうのに、イノセンスはなさそうだ。
『帰らずの森』という怪奇現象ってイノセンスのせいではなくて、あのアクマたちがこの村を訪れる人を襲っていたからでしょう?」

「おそらくな」

「魔女はどうなんでしょう?」



まだこいつはそんなこと言ってんのか?
レティシアも言っていたが、いたらオレも会ってみたいくらいだ。

そう心の中だけで呆れる。



「どうします?イノセンスもないようですけど…」



任務は『ファインダーの救出』

すでに二人の死亡は確認、一人は救出成功。
コムイに言われた任務ならすでに完了しているが…



「アクマは複数いた。まだ村やこの付近に潜んでいる可能性がある。
全員倒してから帰還する。レティシア、いいか?」



こくんっと静かにうなずいたのがわかった。
どうやら雨ばかり見ているだけではなく、会話も聞いて頭も働いているようだった。


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