「わかりました。では、任務はイノセンスの調査からアクマ退治に変更ですね。
役に立たないかもしれませんが、俺も一緒にいていいですか?」

「…あなたに、その覚悟があるのなら」



初めて神田とゴズの会話にレティシアが口を挟んだ。
静かで、冷たい声に二人は同時に顔をそちらへ向ける。



「どういう意味ですか?」

「あなたに覚悟と誠意があるのか確かめたいだけよ。
もしかすると、いえ確実に私達と一緒にいればアクマと遭遇し、戦いがおきる。
その戦いに巻き込まれ、最悪の場合あなたは死んでしまうかもしれない。
それでもあなたは私達と一緒に行動を共にする…?」

「はい」

「…助けはしないわよ。私はね」


普段は足手まといになるなら切り捨てる、と言っているけど、ユウちゃんはあぁ見えて熱くて優しい男だ。
ゴズに厳しく当たっているけれど、ゴズが危険な目にあったら可能な限り助けるはず。

冷たい光を灯しながらレティシアはまっすぐゴズを見つめた。


「私、そこまで優しい奴じゃないの」


はっきりと言い切った。
言葉の通りならば、危険な目にあったとしても助けないということ。
自分の身は自分で守れ、と案に伝えていた。

そんなレティシアの厳しさにゴズはぐっと唇を噛んだが、しっかりと目が強い光を帯びている。



「…それでも俺は一緒にいます」

「そう…なら私は何も言わないわ」

「神田さんは…」



ちらりとゴズは神田を見た。

いつもなら冷たいことを言うのは自分の仕事だった。
しかし、今回レティシアが言いたいことを言っている。

ならば自分は違う観点で考えなければ、と神田はゴズがいるメリットを考える。



「かまわんが、足手まといにならないようにしろよ」

「わあ!ありがとうございます!」



嬉しそうなゴズの声。
レティシアはそんなにいいものじゃないと思うのと同時に心が冷えていくのがわかった。

冷たい、冷たい、氷のような心。
普段の私はこの心を必死に抑えるために笑顔を作る。
笑って、誰かをからかって、自分の心を見せないようにしている。

でも…今日は…あの日と同じ雨の日だから……



「相変わらず私も弱いわね…」


小さな呟きは雨の音に消えていった――――


「じゃあ、明日は他の村人にも話を聞いて調査しましょう!」



神田はゴズの大声に顔をしかめた。

なんでコイツはこんなに声がでかいんだ?
誰が聞いてるかわからないこの状況で。



「わかったから、もうちょっと声を小さくしろ」



そう注意するのと同時に店主が夕食ができたと声をかけてきた。
…あの店主はいつから聞いていたのだろうか、と考えていたが、ゴズはやはり大声で「ありがとうございます!」と返して、一目散に子供のようにどたどたと降りていく。

そんなゴズに呆れながらも神田はちらりとレティシアを見た。
相変わらずただ雨の降っている外を見つめているだけ。



「…行かねぇのか?」

「…、…行くわ。情報を得られるかもしれないから」



さらっと髪がゆれてやっと神田と目をあわせた。
神田はいつも以上に哀しそうな目をしていることに何か心に引っかかりを感じる。

なんだ?心が…苦しい?
どこも怪我してねぇのに…か?

まだ知らないこの感情に神田はとまどいを隠せない。
レティシアはその横を通り過ぎ、静かに降りていく。

釈然としないまま、その後を追って神田も降りていった。

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