「どうも、こんばんは」



二階から降りると台所からでてきた16,7歳の少女が挨拶してきた。
金髪に巻き毛、青い目というとフランス人形のようだ。

レティシアほどではないが美女の部類に入るだろう。

棒立ちになっているゴズが邪魔でレティシアも神田も入れない。
神田がガンっと強めに蹴ると何を勘違いしたのかゴズは一気に話しかけ始めた。



「は、初めまして!いや、お美しいですね!お嬢さんですか?」



レティシアの時は美しすぎて何も言えなかった。
でも今は頬を染めて、さらには下の鼻を伸ばしている。

神田は頭の片隅で無意識にレティシアの方が美人だと思っていたのだが。



「そうなんですよ。ソフィアといいます」


ソフィアが自己紹介がてらにこりと笑う。
レティシアは軽く微笑んだだけで、ソフィアと話そうとしなかった。


「お疲れでしょう。あまりたいしたものはないんですが、夕食を召し上がってください」



店主の謙虚な言葉にゴズは元気よく返事をするとすぐさま席につく。

長方形のテーブルに料理が並べてあっておいしそうだった。
神田とゴズが並び、レティシアも神田の隣に座った。



「すいません、こんなものしかなくて」

「ありがとうございます。ではさっそくいただきます!」



あいさつをするとすぐさまゴズがスープに手をつける。

レティシアは根っからのベジタリアン。
ソーセージやパンは食べようとは思わない。

とりあえずスープのお野菜を食べているとゴズが「おいしい!」と大きな声で褒めた。
どうやらソフィアさんが作ったようで、おいしそうに食べるゴズに嬉しそうに笑っていた。



「ソーセージもおいひいでふよ。あ、パンもおいひい!」

「食うか喋るかどっちかにしろ!」

「テーブルマナーを学んだ方がいいわね。…それにしても…」



思わずレティシアが口を出してしまった。

そして神田をじぃっと見つめる。
突然見つめられた神田は少しだけ心拍数が上がり、思わず「…んだよ」と声を絞り出した。



「ううん。ユウちゃんがお蕎麦以外を食べているの初めて見たから他の料理も食べれるんだぁっと思って」

「お前オレを何だと思ってたんだ?」

「蕎麦馬鹿」

「もはや人間じゃねぇじゃねぇか」

「あら、お馬鹿は愛するものよ?」

「阿呆か」



こんな会話をしながらそれでも神田は少しホッとしていた。

さっきまでのレティシアはどこか様子が変だった。
だからいつものような調子に戻ってくれて…ってなんでそこでホッとするんだ、オレ。
自問自答して百面相する神田にレティシアはどうした?とばかりに首を傾げていたが。

レティシアと神田が会話している間、ゴズはソフィアと話していた。



「ソフィアさんはお店を手伝っているんですか?」

「いいえ。私はミッテルバルトの町で針子の仕事をしているんです。
最近、ちょっとまとまったお休みをいただいたので、久しぶりに村に帰ってきたんです」



その会話が聞こえてきて神田は素早くゴズに目配せした。

ゴズは腐ってもファインダー。
そこは心得たとばかりに軽くうなずいた。



「町から村へ来たんですか?それはいつ頃ですか?」



急に顔つきが変わった。
レティシアは一応ファインダーだったのねなんて酷いことを考えている。

そんなお仕事モードのゴズにソフィアは顔色を変えることなく、首を傾げた。



「えーと、十日前ぐらいかしら」

「そのときは森の一本道を通って帰ってきたんですか?」

「えぇ。それしかこの村に帰る道はありませんから」

「それで無事に来られたんですか?道中何事もなく?」

「えぇ。…どうかしたんですか?」



ソフィアが不安げに顔を曇らせた。
しかし彼女の話からすると十日前まではアクマはいなかったことになる。
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