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「村に帰ってきてどうですか?何か変わったことはありませんでしたか?」
「そうですね…うーん…特に変わったことはないですよ。ね、お父さん」
「あ、あぁ…」
「そうですかーまぁ、平和そうな村ですもんね。
実は『魔女の村』って噂を聞いていたんでちょっとびくびくしてたんですよ〜」
がしゃんっと派手な音がした。音の主は店主がカップを落とした音。
店主は顔を真っ青にしている。
…なんでそんな反応をする?
初めて会ったときに『帰らずの森』の噂を聞いた時は「へぇ、そんな風に言われているのか」とばかりの反応だった。
だけど『魔女の村』という言葉を聞いた途端に顔を真っ青にした。
…森が原因だと思っていたけど、本当は村に何かあるのかしら…?
そう鋭い瞳で店主を見つめているレティシアだったが、ソフィアは「どうしたの?お父さん」と心配そうに見つめていた。
店主は足が痛んだから先に休む、と顔を真っ青にしたまま出て行くとソフィアが小さくため息をついた。
「魔女ですか…そんな大昔の伝説をまだもっともらしく話す老人とか多いんですよね。
以前、偏屈なおばあさんが村はずれの小屋に住んでいましたけど、普通の人でしたよ」
すると突然ソフィアが吹き出した。
レティシアはどうしたのだろうと視線の先を追うと……
「あらら…こんな人がいたのね」
「お前な…」
呆れてものが言えないってこのことだな…と二人は同時に思っていた。
ゴズが一心にスープの皿をなめていたのだ。
やっと呆れた視線に気がついたのか、ゴズは今さら慌ててやめた。
「あっ…すいません。スープがおいしすぎて思わず」
「いいんですよ、気にしないでくださいな。量が少なすぎますよね。ごめんなさい」
「い、いえ。そんなことはありません。大丈夫です!」
「…ゴズ、私のをあげるわ」
「え!?いいんですか!?」
大丈夫だというゴズの言葉には説得力がなさすぎて、レティシアは思わず自分が残していたものを差し出した。
案の定、お腹の空いていたゴズはいいんですか!?と勢いよく身を乗り出してきた。
そんなゴズに神田が鬱陶しそうに顔をしかめていたが。
「えぇ。私ベジタリアンだからお肉や魚は食べないの」
「なら遠慮なくいただきます!!」
「…いいのか?お前が腹減るだろ」
「そこまでないわ。それに私サラダしか食べない主義だもの」
食べない、じゃなくて本当は食べることができないの間違いなんだけど。
それは、ユウちゃんが知らなくていいことだものね。
「…そうかよ」
ゴズはレティシアの分のパンやソーセージを貰って嬉しそう。
でもそれでも足りないようで、物足りなさそうな顔をしているゴズにソフィアは「ちょっと待っててくださいね」とキッチンへ向かった。
しばらくするとソフィアは白い袋を持ってくる。
「ゼリービーンズです。大人の男性に差し上げるようなものじゃないんですけど」
「ありがとうございます!お菓子、大好きなんですよ〜」
「(単純ねぇ…)」
「もっとお出しできたらいいんですけど、食糧にも限りがあって。貧乏な村なので」
「いえ、そんな!突然訪ねたうえに、泊めてもらって食事までいただいて。
じゃあ、俺たちは二階で休ませてもらいますね。
あ、もしかしてあの部屋はソフィアさんの部屋ですか?なんなら俺たちは廊下でも構わないので」
「レティシアがいるのによく言えるな…」
「え?いえ違います。私の部屋は向かいなので、お気になさらないで」
「(ならあの部屋は誰の部屋なの?)」
「あの、失礼ですがお母様は?」
あら、意外と気が利くわね。気を利かしたわけでもないと思うけど。
きっとあの部屋が誰のものか知るために聞いたわけではないのだろう。
ソフィアはゴズの問いに対して少しだけ目を伏せて3年前に亡くなったことを教えてくれた。
悲しげなソフィアにそれ以上は聞けなくて、ゴズは謝ると部屋で休むように伝えたのだった。
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