「…ユウちゃんがいくら早起きでも早すぎよね。どうしたの?」

「ゴズがいねぇ」

「!どういうこと?」

「わからん。いつの間にかいなくなってた」

「そう。なら探しに行かなきゃね。ユウちゃん、これありがとう」



そういって肩にかかっていた神田の団服を脱いで差し出した。
しかし、神田はレティシアから視線を外し、団服を受け取る素振りをみせない。

ユウちゃん?ともう一度呼びかけるとぶっきらぼうに「まだ着てろ」と突き返されてしまった。



「でも、寒いでしょ?」

「寒くなんかねぇ」



きっぱりと言い切る神田に思わず小さく笑ってしまった。
雨に濡れている上にこの夜の寒さだ。寒くないわけがない。

本当に、意地っ張りで…不器用で、優しい……



「ユウちゃん、これは私のカンなんだけど、たぶん今夜戦闘があるわ。
団服を着ておかないと大けがする。だから着てて」

「…わかった」



エクソシストとしての仕事があるならば、頑丈な団服を着ておいて損はない。
団服を着ている場合と着ていない場合では怪我の大きさに差が出ることは明らかだ。

神田も団服の有用性をわかっているからか、少し湿った団服を受け取り羽織った。



「…ごめんねユウちゃん。ちょっと湿っちゃったかも」

「ちょっとじゃねぇな」

「あらら、ごめんね」

「いい。気にすんな」

「…なんかユウちゃんいきなり優しくなったわね」

「なっ…!」



図星だったりする。

いつもの調子のレティシアだったら神田もこんなことしなかったことだろう。
でも今のレティシアは悲しそうな…今にも泣きそうな顔をしている。
そんなレティシアを放ってはおけなかった。

だが、そんなことを口にできるほど神田は気障でも素直でもない。
小さな舌打ちをするだけにとどめ、レティシアに背を向けた。



「行くぞ!」

「うん」



少しだけど、距離が縮まった気がした―――

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