少し村の中を歩いていると、突然神田の足が止まる。
レティシアも足を止め、短くどうしたの?と尋ねた。



「これ見ろ」

「!これは…」



地面にぽつぽつと落ちているのは色とりどりのゼリービーンズ。

あれは間違いなくゴズがソフィアにもらっていたゼリービーンズだ。
少し離れたところにも違う色のゼリービーンズが落ちている。



「これを辿っていけばゴズがいるわね」

「あぁ」



少しずつ落ちているゼリービーンズを手掛かりに無言で歩いていく。

レティシアは頭の片隅で昔こんな話があったなと思い出していた。

確か…ヘンゼルとグレーテル、だったかしら。
あれも魔女の棲む家に行き着いたわね。ホント、そっくり……



「ユウちゃんあれ、」

「あの家か。魔女が住んでたとかいう家は」



家に近づいた瞬間何かが横から飛び出し、神田は素早くよけレティシアは大きく後退する。
よくみればその男は森で取り逃がしたアクマ。


「お前ひとりか?」


周りには気配がない。
つまりはアクマはこの男一人ということか?


「なぜ、お前達はこの村に来た者を殺すんだ?」

「(無駄だとわかっているんだろうけど…気になるわよね)」

「そしてなぜ、村人には手をださない?」

「アノ御方ノ…命令ダカラダ」

「あの御方とは誰だ?」



それ以上は答えることなく、男は無言で斧を構え襲いかかってきた。
神田は素早くイノセンスを発動させ、男と神田が一瞬交差し……


「さすがユウちゃん。日本剣士ね」


その鮮やかな刀さばきにレティシアが純粋に褒め言葉を口にする。
神田が六幻を鞘におさめた瞬間、男の体は跡形もなく爆発した。



「…スマナイ。許シテクレ―――」



そんな声が聞こえた気がした。
一体誰に向けた謝罪だったのか。…それはレティシアにも神田にもわからなかった。

しかし、前に進まなければならない。ゴズはまだ見つからないのだから。

神田が小屋のドアを乱暴に開け放つと、レティシアはすぐに鼻を押さえた。



「…カビの匂いって苦手…」

「お前でも苦手なモンがあんだな」

「ユウちゃん、ユウちゃんのセリフをそのままそっくり返すわ。『私のことどういう風に見てるのよ』」

「…無敵最強怖いもんなし」

人の話を聞かない、ベジタリアン。

「それは褒め言葉として受け取るわ」



肩をすくめるとドアを挟んだ向こうから物音が微かに聞こえてきた。
まだアクマがいたか、と神田は六幻を抜くと一気に蹴破る。
その隣でレティシアは鼻をおさえながら、乱暴ねぇ、と呑気に考えていた。

すると隣の部屋とは比べのもにならない匂いがレティシアの鼻を刺激する。


「…っ!」


反射で息を止め、顔をしかめた。
あまりの異臭に思わず涙が出そうだ。
…しかもこの匂い、間違いでなければ……

さらに目を凝らしてみると、奥にゴズが縛られて蓑虫状態になっていた。
そしてその隣には、


「(あら予想外の人が)」


お世話になっている店主が。

蓑虫状態のゴズと一緒にいる、ということは犯人である可能性が高い。
神田もレティシアも少しだけ視線を鋭くする。



「おまえもアクマか!?」


神田が凄みながら詰め寄ると老人は悲鳴をあげて転がった。

アクマならすでにコンバートしているだろう。
つまり結論。彼はアクマではない。
レティシアと同じように神田も同じことを考えたのか、無言でゴズの猿ぐつわをはぎ取った。



「わーん!来てくれると思ってました!」

「うるさい!」



ゴズの猿ぐつわを取ったとたんにこのうるささだ。
…怪我はしてねぇようだな、この元気からみると。

安心はしないが(心配はしていなかったので)神田は店主を一瞥した。


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