「お前、何やってるんだ!
そんなでかい図体してあっさり捕まってるんじゃねぇよ!
あの店主なんか、相手にならないだろうが!」

「ち、違います!」

「何が違うんだ?」

「店主さんはオレを助けに来てくれたんですよ!
猿ぐつわを取ってくれようとしたとき、神田さんが来たんです!」


つまり店主にとって、二人はバッドタイミングに来てしまったようだった。
あいつに捕まったんじゃないのか、という神田にゴズがブンブン!と勢いよく首を振った。
ゴズが言うには気づいたらこの部屋にいて、縛られたという。

そんなゴズの不可解な発言にレティシアは自然と眉を顰めていた。
何、それ?意味がわからないわ、と。

神田も同じ思いなのか、怪訝そうな…いや、自然と顔が険しくなったようでどんどんゴズを睨みをきかせ始めた。
睨まれただけでも神田は迫力があるので、ゴズは内心「ひぃ!」と情けない声をあげながら怯える。



「そ、そんな怖い顔しないでくださいよ!本当なんですから!
えーと、ですね、そう、夢を見ていたんですよ!」

「…夢?」

「ええ、夢の中にステーキが出てきて」

「(ステーキって…子どもじゃないんだから…)」

「その、ステーキののった皿を追っているうちに、気づいたらこの小屋に来ていて縛られてたんですよーもう何がなんだかわかりません」

「それはこっちのセリフだ」



ゴズの話にレティシアはふむ、と考えをまとめ始める。

つまりゴズは寝ぼけてここに来たということ。
別にアクマに連れ去られたわけではない…はずなのに、何故だろう…何か引っかかるわ……



「もしかしたら魔女の仕業ですかね〜なんつって」



はははーと呑気な笑い声をあげるゴズに神田が問答無用ですらりと六幻を抜いた。
レティシアはキレたかな?と思いつつ、神田のことを止めない。

ゴズはふざけた自分に怒って斬られると思い、顔を真っ青にした。



「わああ!すいません!反省してますから殺さないでください!」

「(ユウちゃんは一体どういう認識をされてるのかしら…)」



六幻を抜いただけで殺されること確定だなんて。
よっぽど普段から六幻を抜いて殺そうとしているのね。
ユウちゃんも誤解されやすいな、なんてレティシアが考えていると、神田は六幻で思いっきりゴズを斬った。
…いや、ゴズではなく、縄を。



「うぎゃあ!…て、あれ?痛くない。
あ、縄を切ってくれたんですね、ありがとうございます」

「(本当にユウちゃんが人を斬るわけないじゃない!)」



わかりやすいゴズの素直さにレティシアはクスクス笑うと「いいから、さっさと立て!」と神田が怒鳴る。
あまりの怒鳴り声にゴズは背筋を伸ばしながら情けない返事をしながら立ち上がった。
そんな二人を見ながらレティシアはさらに考えを深めていく。

寝ぼけて自分でここに来たのであれば、縄を縛った人間が少なからずいるはず。
あのアクマが言っていた「あの御方」とやらが黒幕と考えるのが自然だろう。

神田は小さくため息をつくと、座り込んでいた店主に目を向けた。



「じいさん、悪かったな。あんたはこいつを助けてくれようとしたのに」

「…お願いだ。黙ってこの村から去ってくれ。今ならまだ間に合うかもしれん」

「どういうことだ?」

「私には…これ以上は言えない。
頼む、店には寄らずに、まっすぐこの村を出てくれ。ここには魔女がいるんだ――」



今にも泣き崩れそうな店主に誰も答えることはしなかった。

魔女、ね。店主がこの言葉に敏感なのは……

考え付いた答えにレティシアはにやりと笑う。もちろん神田にもゴズにも見えないように。



「ま、魔女ってなんですか!?」

「行くぞ、ゴズ」

「はいっ」



神田は視線だけでレティシアに部屋から出るぞ、と伝えると部屋を出て行こうとする。
レティシアはレディファーストっていう言葉を知らないのかしらと場違いなことを思いつつその後から出て行った。

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