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「か、神田さん…斬るんですか?彼女を…」
「当たり前だ。あれはアクマだ。そしてオレはエクソシストだ」
「やめてください!彼女は被害者でもあるんですよ!」
「馬鹿かお前は」
こいつ、まだこんなこと言ってんのか?
よくファインダーでいられるな。信じられねぇほど甘チャンだ。
この戦いに…被害者も、加害者も、アクマなら関係なくなるんだよ。
「馬鹿でもいいです!オレも、これ以上人が死ぬところを見たくないんです!」
「ゴズ」
「なんですか?」
「あれは人じゃない。アクマ、だ」
「っ!!あんたには人の情ってものがないんですか!」
「じゃあ、ここで黙って殺されてやるのか?いいからファインダーは引っこんでろ!」
「っ!」
激高しすぎて我を失っているのか、気の弱そうなゴズが思いっきり神田を睨んでいる。
まだ何か言おうとするゴズにレティシアの声が遮った。
「ゴズ、黙りなさい」
「!レティシアさんも彼女を殺すんですか!?」
「ゴズ、私は言ったはずよ。『覚悟はあるのか?』と。
あなたは覚悟はあると答えた。あなたの覚悟はそんな安っぽいものだったの?」
「違います!でも…っ」
「でも、何?はっきり言って話にならないわ。
もしここでアンジェラを見過ごすとする。
でも彼女を見逃したことでどれだけの人が死ぬと思っているの?
アクマは悪性兵器。あくまでも『兵器』なの。
伯爵の『おもちゃ』
そのおもちゃを壊すのが私達エクソシストの仕事」
「…っ」
ゴズは拳をにぎりしめてうつむいた。…レティシアが言っていることは、正論だったから。
アクマは人を殺す。そのアクマを壊すのがエクソシストであり、…ファインダーたちにとっては希望なのだ。
これで何も言わないだろう、とレティシアは木に体を預ける。
神田がアンジェラをにらむとアンジェラもにやりと笑った。
「魔女の力、見せてやるわ。出てこい!!」
アンジェラの声と共にたくさんの殺気が近づいてくる。
レティシアもこれには気を引き締めた。
――村人全員、アクマにしていたのだから。
集まった村人はかるく五十人を超えていた。
みんなの目にあるのはただの虚空のみ。いや、虚ろな目の中にある、悲しみだけだった。
「ユウちゃん、手伝おうか?」
「手ぇ出すな」
「ふふっ、そう言うと思ってたわ。了解。手は出さない」
レティシアは再び木の上にゆったりと座った。
…信じているからだ。神田の強さを。そして、実力を。
しかし、圧倒的な数だからかアンジェラは勝ち誇った笑みを浮かべた。
「そいつらを殺せ!」
アンジェラの合図で村人達――アクマが一斉に襲ってきた。
神田は落ち込んで俯いているゴズに鋭く言い放つ。
「お前は離れていろ!」
“イノセンス発動!!”
神田は六幻で一気にアクマ達を斬っていく。
しかし数が数。あまりの労力に神田は小さく舌打ちする。
「チッなんて人数だ!」
さぞ、千年伯爵は忙しかっただろうよ!
「(いやあの人は意外に暇人よ)」
神田の心を読み、レティシアは小さく呟き返した。
ふぅっとため息をつくと神田の背が一瞬あの日の自分と重なり、そっと手のひらを見つめた。
雨……
アクマの大軍……
一人のエクソシスト……
唯一の人間…*―
思い出した記憶に、ぎゅっと手を強く握る。
もう…あんなことは繰り返さない。絶対に…っ!!
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