「ゴズ!」



神田の怒鳴り声にレティシアは勢いよく顔を上げた。
そしてその危険性に気付くとレティシアは素早く木の上から飛び降り、動作なくゴズの前に躍り出た。

ぽかんとしているゴズ。
斧を振り下ろすアクマ。
その間に体を滑り込ませたレティシア。

すべてが、スローモーションのようだった。


――ザクッッッ!!!!

肉の切れる音。
レティシアの目に瞬間的に映った黒。



「わあああ!神田さん!」

「ユ……ちゃん…?」



斬られたのはレティシアではなく神田。
レティシアがゴズを庇おうと背を向けたその背を庇うように神田が立っていた。
斬られた衝撃が強く耐えきれなかったのか、がくっと神田の膝が崩れる。

黒い髪がよけいにあの人を思わせた。

嫌……
また私は…守られてしまったの…?

ゴズは駆け寄ろうとしたが神田が手を挙げて制す。



「来るな!」


「で、でも!そんなに血が!傷口からアクマのウィルスに感染します!」

「オレにはアクマのウィルスはきかない!いいから離れてろ!」

「ユウちゃん!!」


呆然とした感覚を無理矢理振り払い、レティシアは少しふらつく神田をささえる。


「なんで…っ」

かばったりしたのっ!?私はこれ以上…!!

「ハッ!お前に怪我させるくらいならオレが怪我したほうがマシだ」
『レティシアが怪我するくらいならオレが怪我した方がマシだから』

「…っ」



どうしてこんなに……ユウちゃんはあの人とかぶるの…?

…ダメ、だ。このままじゃ…私はあの時の弱い自分のままだ。
私は守りたい。ユウちゃんを…こんなにも優しい人を、守りたいんだ…!



「…ユウちゃん、ここ動かないで。後は私がする」

「発動するの、怖いんじゃねぇのか?」

「…ッ!!」



神田の一言にレティシアは大きく目を見開いた。
まさか気づかれてたとは思わなかったから……



「だったら無理すんな」



しっかりと前を見据えながらレティシアの頭に手を乗せる。

温かい、大きな手。
あの人に撫でられるのが心地よくて大好きだった。

心が何かに満たされていく感覚が体を駆け抜ける。



「…ユウちゃんらしくない言葉ね。私なら大丈夫」


だって信じられる人が…隣にいるんだもの。


「…もし、もし私が…力の制御が出来なくなっても…」


あの日と同じように……
私の力が誰かを傷つけ始めたら……


「ユウちゃんが止めてくれるでしょ?」

「…!…あぁ」


アイツが初めてオレを認めてくれたような気がした。

不敵に笑うとレティシアが微笑みかえす。



「イノセンス発動!」


淡い光がレティシアを包み、力がその場に満ちる。
神田は距離をとり、レティシアはアクマの中に紛れ、一気に破壊していった。



「六幻 災厄招来」

界蟲“一幻”!!!!


その後ろから神田は一気に六幻を横にふるった。

放たれる界蟲。
レティシアが元々減らしていたので、残りはほとんど吹き飛んだ。

ふわりとレティシアが神田の横に着地する。


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