『それは神のイノセンス』

『全知全能の力なり』

『またひとつ…我らは神を手に入れた…』


「ボクらのボス、大元帥の方々だよ」


アレンが少し見上げれば六つの椅子に座る人たち。
顔はわからないが一人、中心に座っている人だけ少し小柄だということはわかった。



「さあキミの価値をあの方々にお見せするんだ」

「…え?」

「(さぁ、アレン・ウォーカーはどうかな?)」


レティシアは椅子に座りながらゆったりと足を組む。
フードで顔は見えないが、期待感からか小さくにやりと笑う。

宙に浮くアレンの体。
同時にヘブラスカが現れた。



「なっ…!?」

「イ…イ……イノ…イノセンス…」



ヘブラスカの触覚がアレンの左腕を弄る。
一体どんなイノセンスなのか、それ以前に本当にイノセンスなのか。
適合者との相性はどの程度なのか。その他諸々必要なことを調べるために。

しかし、その必要性を知らないアレンはその気持ち悪さに顔をしかめた。



「(なんだコレ…っ十字架よ発動しろ!)」



発動しない。
いくら発動しろと念じても、うんともすんとも言わなかった。

コムイは発動しないことをわかっているのか笑顔のままアレンを見つめる。



「無理ムリ。麻酔まで明日まで動かないって言ったでしょ」

「!コムイさん…っ」

「キミの十字架はとってもすばらしいよアレン♪
どうだいヘブラスカ?この神の使徒はキミのお気に召すかな?」

「(またまたそんなこと言って…)」



コムイのからかうような言葉にレティシアは呆れるが、でも…と楽しそうに見つめる。

このまま何もせず黙ってこの状況を受け入れるのか。
それとも、この状況を打破するために何か行動を起こすのか。



「(どうする?アレン)」

「…この…っ動け!!!」

「まさかっ…!」



予想外の事態にレティシアは思わず身を乗り出してしまった。
動かないはずのイノセンスを強制的に解放してしまったのだ。

とたんにえも言えぬ激痛がアレンを襲い、耳を塞ぎたくなるような叫び声を上げていた。



「!な…なんて子だ。麻酔を…」

「うあっ」

「し…神経がマヒしてるのにむ…無理に…発動しちゃ…ダメだ!落ち着いて…私は敵じゃ…ない」

「レティシア、落ち着け」

「…そうね。ごめんなさい」



思わず身を乗り出してしまったレティシアに他の大元帥から小さく注意が発せられる。

この場において私情は禁物。
いくらアレンに人一倍の思い入れがあろうと許されないことだとレティシア自身が一番よくわかっていた。

自分の気持ちを落ち着かせるため、レティシアは小さく息をつくと深く椅子に座り込んだ。


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