「レティシア」

「何かしら?」



帰りの汽車の中。
ガタンゴトンとしばらく揺られていると神田に声をかけられ、少しだけ体が固くなる。

聞かれるとは思っていた。
ジャスデビのこと、天使のこと……こちら側へ来いと勧誘されていること。
…だからといってちゃんと答えてあげることはできないけど。



「…天使様ってどういうことだ?」

「ストレートに聞くのね。私は知らないわ」

「でもあの時、まじでキレただろ」



神田も感じた強い殺気。
向けられたわけではないが、思わずゾッとしてしまった。



「そうねぇ…あの時はちょっと苛々してたから」

「あ?なんでだよ」

「だって…ユウちゃんが構ってくれないんだもん!」

「…はぁ……」

「なんでそこでため息!?私は真剣に言ったのよ!?」

「…もういい」

「ユウちゃんのバカ―――!!!」


叫んでみたが、神田は無視し目をつぶった。
最近私、イタイキャラになってないかしら…と本気で思ったが、ごまかせたことにホッとする。

まだ知られるには早い。
ノアに接触するのも少し早かったがそれはいい。

でも……



「(ティキ…)」



あの名前を聞いただけでドキッとした。
べつにそれが恋してるから、ってワケじゃない。

それくらい自覚している。

ただ…ドキッとしてしまうのだ。
ありきたりな言葉かもしれないけど…それしか表現できない。

レティシアは窓の外をぼんやりと見つめる。

目をつぶった神田は少しひっかかることがあった。
天使様、というのも気になった。伯爵に勧誘されていることだって。

でも一番は……



「(ティキ…って誰だ?)」


あのジャスデビとかいう奴らが『ティキ』と言った瞬間、レティシアの雰囲気が変わった。

どう変わったかって言われると…オレもちゃんとした言葉が出ねぇが……なんとなく、変わった気がした。



「(レティシアは否定したがもしかしたら…)」


好きなのかもな。そいつのこと。
そう思うと何ともいえない感情がこみ上げた。


汽車は走る。

二つの気持ちを乗せて。

それぞれ複雑な思いを抱えながら……


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