3
「初めまして。大丈夫かしら?」
声はしっかり届いているのに、返事をする気にもなれずぼんやりと虚空を見つめるだけ。
そんなアレンの様子にレティシアは悲しそうに目を細めたが、優しくアレンの頭を撫でた。
「この道は厳しい。
それでもあなたはこの道を選んだ。
決して振り向かないで。
後悔しないで。
あなたのお義父様はあなたを愛していたのだから」
聞こえてきた優しくて、芯のある声にゆっくりとアレンは視線を上げた。
真摯な目。
まっすぐな瞳に一点の曇りもなかった。
しかし、アレンと視線が合うと穏やかな顔でゆっくりと微笑む。
「今はわからなくていいわ。
でもあなたが再び私に会うときまでに理解してくれたら嬉しい」
少しの間、頭をなでてくれたが静かに立ち上がった。
温もりが離れていったことで少し寂しく思ったが、何も言えない。
レティシアは離れたところで煙草を吸っているクロスの所へ行く。
「クロス、あの子育てれるの?」
「…育てるんじゃなくて育つんだよ」
「つまり放任するわけね。可哀相」
「ならお前が育てればいいだろ」
「無理よ。私の方が危険だもの。育ててあげたいのは山々だけど」
「…お前は、これからどうするつもりだ?」
クロスの問いにレティシアは空を見上げた。
まだ雪は降り続いている。
冷たいものが頬にあたり、少し目を細めた。
「そうね…とりあえずいろいろなところを放浪するつもり。イノセンスを見つけながらね」
「そうか…オレとは一緒に来ないんだな」
「私がいたらクロス、愛人が出来ないわよ」
「そうかもな…お前以上に綺麗な奴はいない」
「ありがと。…でもそのセリフを一体何人の愛人に言ってきたのかしら?」
ふふっと笑うとクロスは少し不機嫌そうな顔をする。
「…誰にも言ったことはない」
「そうだといいけど。…あの子、アレン・ウォーカー。
何か…すごい力を一瞬感じたわ。
もしかしたら…彼が私が探していた子かもしれない」
レティシアは真剣な声だがクロスは煙草の煙を吐き出した。
その煙たさにレティシアは少し眉をひそめたが、咳で声は出ない。
「そうか。なら一応見といてやる」
「ケホッ、よろしくね。餓死させないようにしなさいよ」
「わかってる」
「(ホントにわかってんのかしら…)」
- 84 -
*前次#
ページ:
back
ALICE+