「初めまして。大丈夫かしら?」



声はしっかり届いているのに、返事をする気にもなれずぼんやりと虚空を見つめるだけ。
そんなアレンの様子にレティシアは悲しそうに目を細めたが、優しくアレンの頭を撫でた。



「この道は厳しい。
それでもあなたはこの道を選んだ。

決して振り向かないで。
後悔しないで。
あなたのお義父様はあなたを愛していたのだから」



聞こえてきた優しくて、芯のある声にゆっくりとアレンは視線を上げた。

真摯な目。
まっすぐな瞳に一点の曇りもなかった。

しかし、アレンと視線が合うと穏やかな顔でゆっくりと微笑む。



「今はわからなくていいわ。
でもあなたが再び私に会うときまでに理解してくれたら嬉しい」



少しの間、頭をなでてくれたが静かに立ち上がった。
温もりが離れていったことで少し寂しく思ったが、何も言えない。

レティシアは離れたところで煙草を吸っているクロスの所へ行く。



「クロス、あの子育てれるの?」

「…育てるんじゃなくて育つんだよ」

「つまり放任するわけね。可哀相」

「ならお前が育てればいいだろ」

「無理よ。私の方が危険だもの。育ててあげたいのは山々だけど」

「…お前は、これからどうするつもりだ?」



クロスの問いにレティシアは空を見上げた。

まだ雪は降り続いている。
冷たいものが頬にあたり、少し目を細めた。



「そうね…とりあえずいろいろなところを放浪するつもり。イノセンスを見つけながらね」

「そうか…オレとは一緒に来ないんだな」

「私がいたらクロス、愛人が出来ないわよ」

「そうかもな…お前以上に綺麗な奴はいない」

「ありがと。…でもそのセリフを一体何人の愛人に言ってきたのかしら?」


ふふっと笑うとクロスは少し不機嫌そうな顔をする。


「…誰にも言ったことはない」

「そうだといいけど。…あの子、アレン・ウォーカー。
何か…すごい力を一瞬感じたわ。
もしかしたら…彼が私が探していた子かもしれない」



レティシアは真剣な声だがクロスは煙草の煙を吐き出した。
その煙たさにレティシアは少し眉をひそめたが、咳で声は出ない。



「そうか。なら一応見といてやる」

「ケホッ、よろしくね。餓死させないようにしなさいよ」

「わかってる」

「(ホントにわかってんのかしら…)」


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