「アクマが退いた?」

「ええ」



ここはミランダの家。
いや正確に言うとミランダが住んでいるアパートの一室。
さっき帰ってきて、アレンのケガの手当てをリナリーがしている。



「ちょっと様子が変でした。僕のこと殺す気満々だったのに。
レティシアには全然攻撃しなかったですよね」



同意を求めるようにレティシアに視線だけを向けると思い出すようにレティシアは視線を上に上げた。



「そうねぇ。なんだかモヤシくんしか見てないって感じ。ちょっとモヤシくんに負けた気がするかも」

「なんの勝負ですか…一応このあたり見回りましたけど」

「でもよかった。レティシアがいたけどレベル2を、あんなに相手するのはアレンくんにはまだ危険だもの」

「そうね。私、モヤシくんに任せようと思ってたし」

「それじゃあ何のために残ってたんですか」

「そうねぇ…ピンチヒッター、かしら」

「充分ピンチでしたよ!!」

「新しい銃刀型の武器、体に負担がかかってまだあんまり長い時間使えないんでしょ?」

「そうなんですよねー…結構体力つくってるんだけどなあ」


ムムムっとアレンが力こぶをつくってみる。
確かに入団した時よりも細腕に筋肉がついていて、細マッチョという体だ。
レティシアはその筋肉に男の子ねぇっと感心した。



「でもちょっと体大きくなったねェ」

「ホント!?」

「私より大きくなっちゃう日がくるのよね…」



嘆かわしいとばかりにレティシアは、はぁっとため息をつく。

レティシアが身長のことを気にしているのはみんな承知の事実だ。
…みんなの本音は充分じゃないか、というものだが。
本人はもう少し、身長がほしいらしい。

そんなレティシアにアレンは苦笑するしかなかった。



「…それで…何してんですか、ミランダさん…」



ミランダの様子にアレンは触れた方がいいのか迷ったようだが、結局触れられずにはいられなかったようだ。

アレン達の視線がミランダに向かう。
時計に向かって、ぶつぶつと呟いているミランダはある意味不気味だ。
リナリーは理由を知っているので、苦笑する。



「私達とアクマのこと説明してからずっとあそこで動かなくなっちゃったの…」

「現実逃避してるのねぇ」



気持ちはわからなくはないけど……

今まで一般人として生きてきたのに突然アクマに襲われて「あなたはイノセンスと関係があるかもしれません」と言われれば、戸惑うのも無理はない。
それでも、こんなにうじうじしなくても…!なんとなぁぁく苛々するわ…!



「私ホントに何も知らないのよ…この街が勝手におかしくなったの。
何で私が狙われなくちゃいけないの…?私が何したってのよぉ〜〜
もう嫌。もう何もかもイヤぁぁ〜〜〜〜」

「く、暗い…」

「ずっとああなの…」

「………」


あぁぁぁぁもう!!
なんなの!?私、ああいうタイプが一番嫌いなのよ!!

多少のマイナス思考はしょうがないと思うわよ!?
でもあそこまでマイナス思考でしか考えられないなんて……
何か起こるのは何か原因がある。
起こったことを嘆くよりも、その原因をどうにかしようと行動する方がよっぽど建設的だ。

それなのにうじうじと…私から言えば苛立ちしか感じないのよ!
…ユウちゃんがいたら…彼女になんて言うかしらね……



「ミ、ミランダさん」

「私…は何もできないの!あなた達すごい力持った人達なんでしょ!?
だったらあなた達が早くこの街を助けてよ」

「はい」

「え〜……」


もちろん上の答えがアレン。下の答えがレティシア。
レティシアはあからさまに「どうして他人任せなの」と顔に書いていた。



「助けます。でもそのためにはミランダさんの助けがいるんです。
あなたは街の奇怪と何かで関係してる。僕達に手を貸してください」

「(モヤシくんはお人好しねぇ…私は正直パスしたいわ。
でも、ノアがいることだし…見捨てることはできないのよねぇ…三人とも)」

「明日に戻りましょう」


コチ コチ コチ   コチン

針の音が大きく響く。
するとミランダが何の前触れもなく唐突に立ち上がった。


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