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「今日はありがとうございました」

「いつでも来いよ」

「はい」



仏頂面だけれど声音が優しいので本音だということはすぐにわかった。

人に教えるということは…特に素人に教えるのはとても大変なことであり、面倒なことのはずだ。
でも、神田の言葉は真摯で姫の中にすんなりと入ってきた。



「あの、」



電話番号聞いてもいいですか、と聞こうとしたとき、携帯の着信音が鳴り響く。
特徴的な着信音に自分の携帯が鳴っていることに気付くと、神田に「ごめんなさい!」と一言いれて電話に慌てて出る。



「はい」

「姫!どこにいるの?そろそろ帰らないとお父様が心配するんじゃない?」

「うん。そうだよね…すぐに行くよ。どこにいる?」

「今最初に降りた入口の前よ」

「わかった。今から向かうね」



一緒に来たリナリーからの着信にそう返事を返して神田のところに戻る。
どうした?と心配する神田に「友達に呼び出されました」と苦笑しながら返した。

本当はもう少し一緒にいたかったが、リナリーをこれ以上待たせるわけにはいかない。



「神田さん、また来ますね」

「あぁ」



ぺこり、と一礼してその場を去ろうとした。…けど、



「おい!」

「あ、はい!」

「…っ、電話番号、教えろ。…連絡できねぇだろ」

「…!はいっ」



照れているらしい。頬が微かに赤くなっている神田に姫は気付くことはない。
ただ、連絡先を聞かれたことが嬉しくて姫は満面の笑みを浮かべて頷く。

姫は携帯番号を口にすると神田の携帯番号も姫の携帯に登録される。
姫は神田の番号をそっと撫でると、わからないように小さく笑って再び神田に一礼すると歩き出す。

その足取りは先ほどより何倍も軽やかだった。








「…やっと聞けた」



そっと姫の番号を見つめながら神田は小さく呟く。

その表情はどこか嬉しそうで、優しかった。


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