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今日も今日とていつのも喫茶店に来た神田に姫が優しい笑みを浮かべる。
いつものようにコーヒーを淹れると姫はおや、とあるものに目を止める。

神田のバッグの隣に剣道道着が置いてあったからだ。

じっと見つめているのに気付いたのか神田は「これか?」と道着を持ち上げる。



「それ、剣道の道着ですよね。剣道をされているんですか?」

「あぁ」

「すごい…ずっとされているんですか?」

「あぁ、幼いころからしてる」

「今度見てみたいです」



今度道場に来るか?と、誘いたかった。

しかし、不器用な神田はそんなことを口にすることができずただ、黙り込んでしまった。
姫の中ではこの話題に満足したようで他のお客さんのところに行ってしまう。

その後姿を見つめているとマスターが嫌な笑みを浮かべてこちらに近寄ってくる。



「姫、手ごわいよ」

「…何の話だ」

「いや?…ただ、姫目的でくるお客さんは君だけじゃないってこと」



ほら、と目で差された方向を見れば姫と談笑している知らない男。
仲のよさそうな雰囲気からあいつも通い詰めているのだろう。

自然と手に力が入っていたようで、カップが嫌な音を立てる。

そんなオレの様子が気に入ったのか、マスターは再びいい笑顔を浮かべた。



「ぼやぼやせずに押さないとね、神田君」

「うるせぇよ」



わかってんだよ。


その言葉だけは飲み込んで、神田はぐいっとコーヒーを煽った。


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