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「着いた」

「え?ここって、」

「オレの家。その足は早めに手当てした方がいい」



動揺する姫を置いて神田はさっさとエレベーターに乗ると部屋の鍵をあけて中に入る。
男性の家に入るなんていいのだろうかと姫は内心葛藤していたが、おんぶされている状態じゃ迷うこともできない。

変に躊躇うこともできずに中に入るととてもシンプルな部屋が広がる。
男性の部屋なのにとても片付いていて、物があまりない印象だった。

ソファーに降ろされると「ちょっと待ってろ」と言われて神田は部屋の奥へ行ってしまう。

明るいところで見ると自分の足がかなり腫れているのがわかる。
心なしか痛みも増した気がして自分の単純さに小さく苦笑する。



「とりあえず薬ぬって湿布しとくぞ」

「神田さん、詳しいんですね」

「こういう怪我には慣れてる」

「剣道、ですか?」

「あぁ」



神田は姫の前に座り込むと足首を持ち上げて腫れた部分に薬を塗りこんだ。

その手つきがあまりにも優しくて少しだけドキドキする。
沁みないようにか湿布を丁寧に貼ってくれる神田の優しさに少しだけ心が温かくなった。



「沁みるか?」

「いえ、全く」

「…そうか」



安心したように小さく息をついた神田は立ち上がると救急箱を片付ける。

また送る、と言って背中を向ける神田に「そこまでお世話になるわけには!」と慌てて手をふる。
タクシーを呼びます、と言う姫に神田は少しだけ考えるそぶりを見せたが「なら連絡してくる」と部屋を出て行った。


またおんぶして帰るにはとても心臓がもたない。

そう姫は小さく呟いた。


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