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同志が逃げ切ったという報告を受けて私は何も言わず沖田に背を向けた。
沖田の言っていることが冗談でないことくらい私でもわかる。
…そんな気持ちに応えられるほど私は大人じゃない。
そして、わからないフリをするには子どもすぎた。
沖田はそんな私に何も言わず見送ったが、後ろから剣心が追い掛けてきたのがわかった。
それでも歩みを止めることはせず、そのまま歩き続けていると何故か剣心に手首を掴まれる。
びっくりして思わず振り向けば、剣心は何故か何ともいえない表情をしていた。
「あれは、…沖田とは、どういう関係なんだ?」
「敵。それ以外にないはずよ」
「敵にあんなこと普通言われない」
「……剣心には、関係ないわ」
「……っ!」
大人げない返し方だったのは私もわかっていた。
確かに剣心には関係ないけど、もっと違うかわし方だってあったはずだ。
でも、今の私は余裕がなさすぎて、剣心を傷つける言葉しか言えない。
そんな私に剣心はぐっと唇を噛み締めたが、掴んでいた腕を突然引っ張り…私の体を抱き締めた。
「―――オレ、はっ!」
「え…?」
「……オレは…」
抱き締められた力が少し強くなったけど、剣心はそれ以上何も言うことはなかった。
でも、どこか苦しそうで、辛そうな剣心を見ていると私も何も言えず。
少し早くなった鼓動に気がつかないフリをして私は剣心の背にそっと手を回した。
「…ごめんなさい。言い過ぎた、ね」
「…………」
「帰ろう」
困ったような笑顔を向けると剣心は黙って私から体を離した。
それから何も話すことなく、私達は帰路についたのだった。
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