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―――あれから数ヶ月。

たくさんの人斬りをしてきたが、まだ新時代は来ず。
剣心は自分の理想との差からあまり笑わなくなった。
それを隣で見ているのは哀しかったけど、何も声をかけることができなかった。
この数ヶ月で変わったことと言えば…お互いお酒の味を知ったくらい。




「剣心!」

「姫…どうした?」

「今夜、暇でしょ?一緒に外行くの付き合って」

「…またか?」

「またって言わない!」




すまない、とからかうように小さく笑った剣心に少しホッとしながら「じゃあまた後でね」と言って仕事に戻る。

…そうして、夜になって二人でいつも行くお店に入り、お酒を注文する。
最初は何か辛くて美味しくないとか思ってたけど、それはまだまだ私が子どもだっただけ。
今ではその中でお酒の甘味が美味しいとかちゃっかり酒飲みの感想まで言える。
お互いにお酒を注ぎ合って一口飲むとすっとお酒が通りすぎて行った。




「美味しいねー」

「あぁ」

「そういえばこの前新しい甘味屋出来たの知ってる?」

「いや…」

「じゃあ今度行こう。ていうか明日」

「…急すぎるだろ」




善は急げ、って言うからね。

そう笑って言うと剣心は意味が違うんじゃないか…と呟いた。


―――ねぇ、剣心。
私はあなたの隣にいるときはできるだけ馬鹿なこと言うから。

だから……

(まだ、笑顔を忘れないでいて)

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