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それからまた巴さんとは話す機会がなくなってしまったんだけど、時々剣心といる姿を見かけていた。
一緒に歩く姿は何処と無く仲良くて…ちくり、と胸が苦しくなった。
そのことに小さく首を傾げながらもそれ以上深く考えることなく。
ゆっくりと時間は過ぎていき、私は自然とあまり剣心とは話さなくなった。
…どうしても、剣心を見ていると巴さんのことを思い出してしまうから。

今日は仕事ではないのでゆっくり書物を読んでいると外に人の気配が。




「姫、いるか?」

「…!父様」




障子を開ければ父、桂の姿が。
何処と無く苛々しているように感じるのだが…一体どうしたのだろうか。
上座をあけて父を座らせると私は小さく首を傾げた。




「どうされました?」

「…少々厄介なことになってな」




父の話を聞けば、宮部さんと意見が食い違い…しかも、




「藩内に裏切り者が…?」

「あぁ」




あまりに予想していなかった言葉。
確かに最近闇討ちが多いとは思っていたが…私の情報が漏れていたということか。
それなら剣心の行動も漏れて…だから最近新撰組と鉢会わせることも多かったのか。




「姫、調査を頼めるか」

「はい、父様」




しっかり頷くと父様は頼んだ、と厳しい顔をする。
そして、笑って相好を崩し、ふんわりとした雰囲気を醸し出した。




「そういえば、お前ももう嫁に行ってもおかしくない年だな。好いた男は出来たか?」

「…っ、いいえ、そんな…!」




好いた男、という言葉に何故か沖田と…一瞬だけ剣心が頭に浮かび、違う、と思い直す。
沖田はただ好きと言われただけだし…剣心に至っては何で思い浮かんだのかすらわからない。

慌てて首を振った私の反応をどう勘違いしたのか(いや、完全に好きな人が出来たと勘違いしてる!)優しい笑みを浮かべられた。




「そうか。だが、もし大切な人ができたなら…その人を一番に考えてあげなさい」

「…はい」




優しい笑顔の父にそれ以上の言葉が返せなかったけど。
いつか好きな人ができたなら…大切にしたいと強く思った。


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