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一人で外を歩く気にもなれず、部屋からぼんやり外を見つめる。
さっき剣心は巴さんと出掛けて行ったのを見たから、しばらく帰ってこないだろう。
…誰か誘って祭りに行けばよかったかな、なんて思っても遅い。

はぁ、とため息をつくとドタドタと誰かが走ってくる音が聞こえてとっさに刀を握る。
パァン!と勢いよく襖が開き、




「姫さん、今すぐ池田屋に来てください!」

「…!?どうしたの!?」

「新撰組がっ…!!」




その言葉と同時に私は刀を持って走り出していた。

池田屋には今宮部さん達がいたはず…!
いくら父と決別してしまったとはいえ、同志には変わりない。

最近池田屋周りを新撰組が見張っていたと噂は聞いていたが、まさか乗り込むとは…!


池田屋の近くまでくると新撰組が多かったが、それとなくかわしつつ池田屋までたどり着けた。
……けど、遅かった。

ほとんどの同志は斬られていて、新撰組ももう撤退しようとしていた。

ぎりり、と拳を強く握り締め、新撰組を睨み付ける。

どうしてこんなことに…!




「…やっぱり来ましたね、沙梛さん」

「…っ、沖田…」




血濡れになった沖田が私の後ろでにっこりと笑っていた。
何処までも自分のペースを乱さない彼に小さく睨みをきかせたけど、あまり強く睨めないのが自分でもわかる。

……沖田も、私も、自分の仕事をしているだけ。

ただ、それだけなんだ。




「怒ってますか?」

「…ううん」

「……やっぱり優しいなぁ、沙梛さんは」

「仕事、でしょ。私も…あなたも」




…そうですね。それもそうだ……

そう小さく呟いた沖田に小さな違和感を覚えた。
ーーー何だろう、この今までの沖田とは違う言い草……

まるでもう何かを諦めているような……




「…沙梛さん、好きです」

「…っ、今それは、」

「大好きなんですっ…」

「……沖田…?」




何だか、嫌な予感がした。


どうして今彼はこんなに必死に私への思いを伝える?
どうしてこんなにも…泣きそうなの…?




「沖田、「沙梛!」…っ、父様」

「…!沙梛さんの父上がまさか桂だったなんて」

「…一番隊組長、沖田総司か」




剣気が飛び交う中、今彼らを戦わせるわけにはいかない、と父の腕を掴み、沖田に別れを告げて歩き出す。

…沖田の視線を強く感じながら。


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