21
ーーー数ヶ月後…
巴を亡くし、俺は遊撃志士として再び京都に戻ってきた。
巴を亡くしたことは俺の中に深い傷を残したが、それは同時に彼女を忘れないことになるのでちょうどよかった。
料亭に戻った後、ふと違和感を感じて首を傾げる。
……姫がいない。
池田屋の事件からあっていないのだが、姫はどこにいるんだろう。
屋敷内では姿を見ないが…違う任にあたっているのか?
気になりだしたら止まらなくて、直接聞いた方が早いだろうと思い、早速桂さんのところに出向く。
桂さんの部屋に入ると「どうしたんだ?」と不思議そうな顔をされた。
恐らくいつもは呼ばれない限り来ないからだろう。
「姫も呼び戻しているんですか?」
「………いや」
「…?何故です?彼女がいた方が、」
「……死んだんだ」
「……え…」
「志士だった姫は死んだ。あれはもう…戻らない」
ぱたり、と本を閉じた桂さんに俺はただ呆然とするしかなかった。
姫が、死んだ…?
姫が……
「う、そだ…」
「…緋村…」
「そんなわけないっ…!彼女がそう簡単に死ぬはずがない…!!」
鮮やかな斬り方、流れるような体の動き。
俺より経験がある分無駄のない人斬り。
今でも鮮明に思い出せるほど、強い彼女が……
そんなはずない、と思わず漏れ出す怒気が桂さんに向かうが桂さんは静かにそれを受け止めるだけだった。
「残念ながら本当だ、緋村。
姫の穴を埋めるのは大変だろうが、頑張ってほしい」
「……っ!」
ぎゅっと拳を握り締めて俺は勢いよく部屋を飛び出す。
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だっ…!
姫っ…!!
『どうしたの?怪我でもした?』
『甘味屋行こう!』
『剣心の血で手は汚れないよ。
…他の人の血で汚れてるけど』
『ーーー剣心』
「姫ーっ…!」
ふわり、とした笑顔。
泣き出しそうな顔。
無邪気に笑う顔。
患者さんに向ける、優しげな顔。
沖田の前で見せた、女の顔。
優しく俺を包んでくれた、抱擁。
それら全てが俺の頭をよぎり、気持ちがぐちゃぐちゃに入り乱れる。
「…会いたい…君に」
姫、と彼女の名前をもう一度呟いて、部屋の片隅に蹲った。
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