24
沖田の側にいて、数ヶ月……
彼は医者の私から見てもかなり衰弱していた。
弱々しく笑う沖田を見るのは少し辛かったけど、こんなに弱った沖田を離れるのはもっと心が傷んだ。
そんなある日……
「先生、沖田さんの容態がっ…!」
「…!」
女中さんの言葉に私は作りかけの薬もおいて沖田の部屋に向かう。
襖をあけると、死の色の濃い沖田が苦しそうに咳をしていた。
急いで咳をとめる薬を煎じるが、咳が止まらず飲むことができない。
ーーーいやだ、お願い、飲んで…死なないで…!
「沖田っ…!!」
「げほっ…沙梛、さ、ん…」
「沖田…っ」
「泣か…な、い、で…っごほっ、…はぁっ…」
弱々しい手が私の頬にあてられて、流れ落ちる涙を優しく拭ってくれる。
その手が少し冷たくて、私は思わずその手を握っていた。
命が零れ落ちていく、感覚。
何とも言えない、喪失感。
ーーーお願いだから、消えないで…!
「沖田…まだ、新しい時代も来てないのにっ…」
「ほ、んと…です、よ……でも……」
沙梛さんが隣にいてくれてるなら、死んでも悔いはないなぁ……
そう今にも消えそうで、でも幸せそうに笑う沖田に握る力が強くなる。
そんなこと言わないで。そんな…死ぬようなこと、言わないでよ…!
(本当は彼の寿命くらい、わかっているはずなのに)
(願わずには、いられないんだ)
「…沙梛、さん…好きです…ずっと、あなたが…」
「沖田っ…いや、ダメ、そんなっ…!」
「…最後、くらい…総司って、呼んで…くれませんか?」
にこ、と笑う沖田に、私ばかり泣いてたらダメだ、と涙を擦り、今までで一番の笑顔を作る。
泣き笑いみたいになっちゃったけど、それでも笑顔で。
「総司…っ」
「…ずっと、そう…呼んで、もらい、たか、った…」
ふわり、と幸せそうに笑って、沖田の瞳が静かに閉じられる。
力を無くした腕は重力に従ってだらりと落ちていった。
「…総司っ…!!」
(まだ、返事も返せていないのに)
(ただ残る、見つかっていない、私の気持ち)
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