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「姫先生ありがとう!」
「はーい」
ーーー時は流れて、数年後……
沖田との別れから一体どれだけの時間が流れたかわからない。
ただ少し空いた心を抱えながら全国を旅して、その間に新政府もでき、時代が変わってしまった。
かつて一緒に戦った仲間や新撰組の人達の訃報を時々聞いてはその墓参りをしたり、その土地に留まったり…自由気ままな生活を送っている。
ーーーただ、剣心に会うこともなく……
皮肉だけど、会いたいと思う人ほど会えないものなんだ。
今は東京に来て治療を行っているけど、さすが栄えているだけあってあまり大きな病気がない。
東京にきたのは親戚の訃報を聞いたからだったからすぐに出る、予定だった。
…人斬り抜刀斉の噂を聞くまでは。
ただ、この人斬り抜刀斉が偽者だっていうのはわかってる。
あの剣心がこの世になって人斬りなんてするはずない。
平和を誰よりも望んでいた彼が、するはずないんだ。
それに剣心なら名前なんて残す暇もなく殺すだろうし。
…私が期待しているのは、偽者を止めるために来てくれること。
剣心なら偽者が人斬りするのを黙ってるわけがない。そう思うから。
と、言ったものの、人斬りは止まらないし…もしかしたら剣心は違う場所にいるのかもしれない。
一体いつになったら会えるのか、全く検討がつかないなぁ……
「…と、甘味屋でも行こうかな」
ずっと診察してて、頭が糖分を欲してるもの。
なんてよくわからないことを呟き、お財布を持ってお気に入りの甘味屋に向かう。
東京にきたら必ず行く甘味屋で、女将さんとはすでに顔馴染み。
こんにちはー、と声をかけると女将さんは「まぁ、姫先生!」と嬉しそうに笑ってくれる。
「いらっしゃい!いつもの?」
「はい、お願いします」
「いつもご贔屓にありがとう」
さ、そこに座って。
と席に案内され、道行く人達をぼぉっと見つめる。
みんな幸せそうに笑っているのを見るとこっちまで幸せな気分になった。
ーーーその時、
「…っ!?」
がたり、と勢いよく立ち上がってもう一度よく外を確かめる。
今、さっき……いや、まさか、あり得ない。
…けど、彼の消息は特に聞いていないから、まさか……
「やはりお前か、沙梛」
「…っ、斎藤…!!」
ニヤリ、と以前と変わらぬ笑みを浮かべた元敵が甘味屋の前に立っていたのだった。
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