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ここじゃ目立つから、ととりあえずお店を出て川原に行く。
元宿敵である新撰組の人間との対峙は危険すぎる。
…周りの人間を巻き込むわけにはいかない。
誰もいない川原で斎藤と向き合えば、斎藤はにやり、と嫌な笑みを浮かべた。
「相変わらずの甘チャンだな」
「…あなたは相変わらずのヘビースモーカーね」
「フン…」
これだけは変えられん、と呟き、斎藤はくわえていた煙草を投げ捨てた。
ーーー微かな緊張感が、二人の間を通り抜ける。
あぁ、私は丸腰なのに、なんて今さら思う。
…沖田との別れから一度も抜いていない自分の相棒はもう錆び付いているかもしれない。
でも、それでもいいと思ってるんだ。
もう、人を斬ることはしたくないからーー……
「…刀は、捨てたか」
「えぇ。…もう、抜く気はないわ」
「腑抜けたな」
「何と言われようと関係ない」
「そうか。…なら、」
がしゃん、という音と共に私の足元に放り投げたのは、刀。
どういうつもり、と斎藤を見やったが彼はただ笑うだけ。
奴の真意が読み取れない…一体何を考えてる?
私が拾ってその刀を抜くとでも?
「抜刀斉はここにいる」
「…!」
「会いたくないか?」
「…力ずくで吐かせろと?」
「………いや、」
ひゅ、という空気の切れる音。
私は反射的に右に逸れていれば、斎藤の刀が私がいた場所に鋭く斬り込んでいた。
…あぁ、この反射的な体が恨めしい。
体を翻すと斎藤の斬撃はやむことなく続けられる。
寸で避けきっていれば、読めてくる斎藤の意図。
…私に、人斬りの感覚を思い出させて、刀を抜かせようとしている。
あの頃を思い出せ。
殺らなきゃ、殺られる。
その刀で、守ってみせろ。
「…っ、うるさい…!」
「フッ…」
ザクリ、と腕を刀が掠める。
その一瞬に気をとられて、避けきれない斬撃が飛んできた。
ーーーー……っ、
息を飲むと同時に、斎藤がニヤリ、と再び笑う。
「……ほう、鈍ってないようだな」
「…っ、斎藤…」
「フン、その目も悪くない」
鞘で咄嗟に受け止めた、刀。
抜くことはできず、刀を蹴り上げて斎藤の刀を鞘で受け止めたのだ。
カキン、と弾くと斎藤は満足そうに笑って刀を鞘に収める。
こんなに楽しそうな斎藤を見ていると癪だ。
「お前はまだ使えそうだ」
「…一体何を企んでる?」
「フフ…それは後からのお楽しみだ」
精々その腕鈍らせるなよ、と言い残して斎藤は背を向ける。
…何かに巻き込まれる。そんな予感をさせながら……
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