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「姫先生、大変です!」
そうやって運ばれてくる患者さんはたくさんいる。
怪我、急病……それらはいつも常に死と隣り合わせだ。
そして、今度もそう。
泡を噴いた彼は毒を誤って飲んでしまったのだろうか、と診察してみれば、
「…麻薬…!急いで解毒を、」
「…っ、先生、もう…!」
お亡くなりに、という助手の言葉にぐっと拳を握る。
…そういえばこの間もこんな症状の患者が運ばれてきた。
最近麻薬中毒の患者が増えているように思う。
知り合いの先生のところにも運ばれているようだし……
ーーー麻薬なんて高価なもの、一体どこから……
「武田観柳めっ…!」
「…あなた、それって一体、」
「姫先生ご存知ありませんか?物騒な噂ばかりの青年実業家でして…そいつが阿片を流してるんじゃないかって専らの噂なんです」
「…武田観柳…」
何もない場所に煙は立たない。
それだけの噂になっているということは何かしらあるということだろう。
ーーー武田観柳について何か調べてみるか。
そう決まれば善は急げ。
私はすぐに立ち上がり、着物に着替える。
「少し出掛けます」
「姫先生、あまりオイタはダメですよ」
「わかってる」
ふわり、と笑って外に出るとゆっくり歩き出す。
ーーー真相を追い求めて。
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