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近くの甘味屋に行くと何時ものように餡蜜を頼む。
ここの餡蜜は本当に美味しいんだよね。
恵さんも同じものを頼んで、少し戸惑うような視線。
まぁ初対面なのに甘味屋行こうって言われたら戸惑うよね。
「最近、東京に来られたんですか?」
「……えぇ」
「ならちょうどよかった!ここの餡蜜本当に美味しくて…東京に来た人には絶対勧めるんですよ」
「そ、そうですか…」
また、戸惑い顔。
そんな恵さんに小さく苦笑して、お茶をゆっくり啜った。
「この辺り、女の医者って少ないんです。…お友達になりたくて誘ったって言ったら怒ります?」
「え……」
にっこり、と笑うと恵さんはびっくりしたようにこちらを見つめた。
しばらく見つめ合ったが私が本当にそれしか考えていないことに気づいたのか恵さんは目を反らすとあからさまにため息をつく。
呆れたような…でもどこか嬉しそうなため息。
「そんな理由で初対面の私と甘味屋に行くなんて……」
「単純でいいでしょ?」
「ふふっ…そうね。…姫って呼んでいいかしら?」
「もちろん」
ここの甘味は本当においしいわねぇ、と笑う恵さんに私も嬉しくて笑い返す。
東京に長居するつもりはなかったんだけど……
医者として患者も増えた。
数少ない医者の女友達もできた。
美味しい甘味屋は知り尽くしているし。
…剣心も、いる。
ーーーもう少しだけ東京にいたくなってしまったな……
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