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あれから私と恵さんはかなり仲のいい友達として時々遊んでいた。
お互い忙しい身だから頻繁ではなかったけれど、信頼するには十分だった。
そんなある日……
「小国先生がお風邪を…?」
「そうなの。それなのにすごく忙しくて…だから手伝ってもらえないかしら?」
「もちろん、すぐ行くわ」
幸い私のところには優秀な助手さんが多くいる。
一人に診療所を任せると小国先生のところに急いだ。
診療所につくとみんな同じような症状の人ばかり。
…どうやら風邪が流行っているみたいね。
急いで薬を大量に作り、解熱剤などを処方する。
一人一人見ていき、どこが辛いのか、など聞いていった。
ーーー……
「…やっと一段落したわね…!」
夜も更ける頃、やっと患者さん達も診ることができて一息つくことができた。
ふぅ、と二人して息をつくと、そんな様子がおかしくて二人で小さく笑い合う。
そんな雰囲気が伝わったのか小国先生が奥から顔を出してきた。
「本当にありがとうございます、姫先生、恵くん」
「いえ、困ったときはお互い様です」
「そうだ!あやめちゃんとすずめちゃんを迎えに行かないと!」
「どこかに預けたの?」
「えぇ、知り合いの家にね。私、ちょっと行ってきます」
「なら、私もいくよ」
ありがとう、と微笑む恵に笑い返すと着替えてから外に出る。
灯りを持って出たが今日は星が綺麗で眩しいくらい。
そんな中二人で歩き出すと前から誰か来る気配。
誰かとすれ違うこともあるだろう、とあまり深く考えずにいると「恵殿?」と前に立っている人間が声をかけてきた。
あちらは灯りを持っていないのにどうして恵さんだとわかった…?
すごく目がいいのかもしれないが……
そんなことを思いながらその人を見やれば、息が、とまった。
「二人を連れてきたでござ……」
「あら、剣さん!ありがとうございます。……剣さん?」
「ーーー…」
お互い、何も言えなかった。
剣心は驚いたように目を見開いて私を見つめている。
そして抱っこしていたすずめちゃんを下ろすと、隣にいたあやめちゃんが不思議そうに「剣にぃ…?」と剣心を見上げた。
私もまさか彼と再び会うとは思ってなくて、何も言えずにいた。
恵さんは私達のただならぬ雰囲気を察したのか、私達を見つめるだけ。
「…まさか、…姫、か?」
「ーーー剣心」
「…ッ!!姫っ!」
隣にいたあやめちゃん達を置いて私を強く抱き締める。
ーーーまるで、縋るように。
剣心、と小さく呟けば伝わってくる体温。
(やっと、逢えた)
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