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「剣さんとはどういう関係なんですか?」
次の日の朝早く、恵さんが来て第一声がそれだった。
確かにあの時何も言わずにいてくれたけど…やっぱり気になるのは気になるのだろう。
少しだけ体を乗り出して聞いてくる恵さんに小さく苦笑した。
「どういう、と言われたら…元同志、ってところです」
「同志?じゃああなたまさか…」
「まぁ…はい、維新志士でした。…途中でやめたんですけどね」
だからずっと一緒にいたわけじゃないんですよ。
そう自分で言いながら微かに胸が傷んだ。
…自分の意思でやめたわけじゃないが、今になって父には感謝している。
もし志士を続けていたら…私は医者を辞めていたかもしれないから。
きっと父はそうなることを予見していたのだろう。
恵さんは苦笑する私に何故かため息をつくと緩やかに髪の毛をかきあげた。
その仕草がとても綺麗に見えて、場違いにも美人さんって得だなぁだなんて思う。
「…恋人かと思ったわ」
「そんな甘いものじゃないですよ」
「(……そう思っているのはあなただけなんじゃないかしら。言わないけど)」
そう、と呟いて恵さんは軽く目を伏せる。
お茶でも飲もうと少し席を外して台所に向かった。
窯に火を入れてお湯を沸かしていると何だか少し治療室の方が騒がしくなる。
急患だろうか、と心配になったが誰も呼びに来ないということはそうでもないのだろう。
恵さんが治療室近くにいるからもし急患だとしても大丈夫だ。
のんびりお湯を沸かしてお茶を淹れると、急須と一緒にお盆に乗せる。
そして再び治療室に戻ると見たことのある少年とお嬢さん、そして…剣心。
恵さんは「少しは我慢なさい!」と叱りながら少年の腕にできた大きな火傷を治療していた。
「少年、またやんちゃ?」
「あっお前あの時の…!」
「あら、姫先生この子と知り合いなんですか?」
「えぇ、前に治療して。恵さん達の知り合いだったの」
いってぇー!と叫ぶ少年を尻目に和やかに笑い合う。
剣心はその様子に苦笑していると隣にいたお嬢さんが真っ直ぐ私を見つめる。
「恵さんのお知り合いの人?」
「えぇ、姫先生って言って私の同僚よ」
「初めまして。…先日は無礼な態度をとってしまって申し訳ありませんでした」
「いいえ!私、神谷薫っていいます!」
「桂姫です。よろしくお願いします、薫さん」
ふわり、と笑うと薫さんの頬が微かに赤くなる。
オレは明神弥彦だいたたたた!と少年が叫んだからおかしくて思わず声をあげて笑った。
ちらり、と剣心の方を見ると相変わらず穏やかな顔をしているから何だか少しだけ切なくなる。
「あっ、こっちは緋村剣心です」
「…えぇ、一応知っています」
「そうなんですか!?」
「はい。…ね、剣心」
「あぁ。…薫殿、実は姫は同志で、一時期一緒に戦ったでござるよ」
「え…!!」
「「(じゃあ何歳なの(なんだ)!?)」」
と、薫と弥彦は思ったらしい。
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