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元々医者の家系に生まれ、物心ついたときから私の周りにはたくさんの医学書があった。
遊び道具は決まって医療器具。父や母の専門的な会話が子守唄だった。
そんなとき、近くで流行り病が発生して、医者である両親を含めた私達一族はその村に行き、治療を行った。
私は幼すぎて近くの家に預けられたのだが、…それが最後。
流行り病は鎮火せず、そのまま一族みんなを巻き込んでその村を壊滅させた。
「一人になった私は本当の父の友人である桂小五郎さん…今の父に拾われたの」
身寄りのない不安で潰されそうな私に手を差し伸べてくれた父。
その手にどれだけ感謝したか……
だから、父の役に立ちたくて必死に医学を学んで、自分の身くらい自分で守れるように刀の稽古をして。
「今の私があるの」
にっこり笑うと剣心は軽く目を伏せて「そうか」と呟いた。
私はきっと運がいいんだと思う。
父に拾ってもらえなかったらきっと私は野垂れ死んでいただろう。
「つまらない話しちゃったね。あっ、すいません!お団子もう一本お願いします!」
「はーい」
「それより剣心、この前ね」
ちゃんと笑顔でいれてるだろうか。
別に私は今幸せだから剣心が辛そうな顔をする必要はないのに。
…この人は、人斬りにするには優しすぎる。
人斬りなんてしなければいいのに。…いや、今なら人斬りをする前なのだから戻れるはず。
「剣心」
「ん…?」
「…もう、戻る気はないの?」
貴方ならまだ、一般人に戻れるよ。
そう暗に含ませたが、見つめた剣心の目は何処までも強い意思が詰まっていた。
…どうして剣心が人斬りを承諾したかは知らないけど、中途半端でない気持ちの強さに初めて気圧された気がした。
「戻らぬよ。…人々が幸せに生きれる時代がくるまで」
「――そう」
愚問だったね、と再び笑って運ばれてきた団子に手を伸ばしたのだった。
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