7
次の日、初めて人を斬ったせいか何処か落ち着かずあまり寝ることができなかった。
しかし、浅い眠りから覚めた頭はもう睡眠を欲していないようで仕方なく布団から体を起こす。
身支度をして冷たい水で顔を洗っていると一気に目が覚めた。
その冷たさに小さく息をつくと後ろに微かな気配がして慌てて振り返ると着物を着た姫が少し遠くに立っていた。
「おはよう、剣心。早いのね」
「…おはよう」
「さっき父に会って…今日は剣心休みだって言ってたよ」
「そうか…」
「今日くらいゆっくりしたら?」
にっこり笑った姫の表情は昇ったばかりの陽射しにとても合っていた。
可愛いな、と無意識に思い、そのことに自分でびっくりする。
いや、可愛いって…自分は無意識に何を思っているんだか。
確かに顔立ちは整っているが、可愛い、だなんて……
「…剣心?」
「あ、いや、」
「ふふ、まだ眠いね。二度寝もたまにはいいよ」
自身の思考にハマっていてぼおっとしていたオレをどうやらまだ眠くてぼおっとしていると思ったらしい。
楽しそうに笑う姫にまた可愛いと思ってしまう自分は重症なのだろうか。
じゃあ、と足音もなく過ぎていく姫に未だ気づかない思いを抱えながらオレはまた部屋に戻ったのだった。
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