オレと君との距離


*へたれなリヴァイさん



ずっとずっと好きだった。

幼い頃から側にいて、悪い虫は全て排除してきた。
…おかげでかなりの鈍感に育ち、今まさにその鈍感に苦しまされているが。



「リヴァイはさ、姫のどこが好きなの?」

「あ?急に何だくそメガネ」

「いやー気になるじゃん!何十年も一途に好きなんだろ?どこを好きになったの?」


教えないと姫の予定全部私が押さえる、と言われて小さくため息をつく。

こいつは悔しいが姫と仲がいい。
それこそハンジが毎日のように話しかければ姫はハンジとべったりだろう。

それは困る。…姫と過ごす時間が減るなんぞ、考えたくもない。


「…まず、とてつもなくかわいい」

「おおお!!素晴らしいよ、リヴァイ!数十年一緒にいて、未だにかわいいと言い切るとは!」

「事実だろ。…何事にも一生懸命で…見てて応援したくなるんだよな」


調査兵団にいれば、命の危険と隣り合わせだ。
部下の命は絶対に見捨てない。

そのために、強くなろうと毎日のように訓練して、…未だに自主トレを欠かずに行う。
人一倍努力家のくせに、それを面には出さない。

そんなアイツを…支えてやりたい、といつからか、考えていた。

きっと、見せたことないほど優しい顔をしていたからだろう。
ハンジは「素晴らしい愛だね」とため息をついた。


「それをそのまま伝えたら?」

「は!?」

「未だに伝えてないとかありえないでしょ。どんだけ大切にしまいこんでんのさ」

「…タイミング、とか、だな、」

「あれ?リヴァイにハンジ?何してるの?」

「っ、姫!」



突如現れた姫に思わず焦る。
一体いつきた、いや、聞いてたのか今の話!と慌てて聞くが、姫は「今来たばっかりだよ?何か話してるなーと思ってきただけだから何にも聞こえてなかったけど」と首を傾げる姫に安堵の息を吐く。

そんな様子にハンジは再びやれやれとため息をついていたが。


「あ!姫!…っと、リヴァイ兵長にハンジさん!お疲れ様です!」

「あぁ!お疲れ、エレン」

「もう!エレン!?何度言ったらわかるの!私、先輩!」

「いやー姫って先輩に見えないっつーか…そうだ!この前の約束、覚えてる?」

「約束、だと?」



エレンの言葉に黙っていたオレも思わず口を出す。

ぎろり、とエレンを睨むと、姫は「あぁ!」と思い出したように笑みを浮かべた。


「エレンの訓練、見るって話でしょ?もちろん覚えてるわ」

「訓練だと?」

「そう。どうしてもミカサに勝ちたいから対人格闘術見てほしいって」

「ほう…」


目を細めると、エレンはあからさまに目線を反らす。
…どうやらこいつも、悪い虫になったらしい。


「いい心構えだ、エレン。班長であるオレが特別に見てやる」

「い、いや!兵長!お、オレ、その!」

「え?リヴァイが見てくれるの!?よかったね、エレン!人類最強が見てくれるならもっと強くなれるよ」


ふわりと笑う姫、真っ青になるエレン。

ふん。姫に手を出そうなんて百年早ぇんだよ。
今から行くぞ、と首根っこを掴んでエレンを引きずる。

そんなオレにハンジは再びため息をついた。



「まだまだ遠いねー…」



オレと君との距離


わかってんだよ、オレだって。
だが、オレとエレンを見て「いい上司になったねー」とぽやぽや笑う姫を見れるだけでもいいと思うオレはやっぱり姫を心底愛してるらしい。

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