君なしじゃ生きられない


*死にたがりだけど強すぎて死ねない女の子とその女の子を心底大切にしてるリヴァイさんのお話。



ドシン!!という音を立てて、巨人が煙にまみれながら倒れる。

その巨人を冷たい目で見下しながら剣をおさめると、姫は小さくため息をついた。



「雑魚が…」

「大丈夫か、姫」

「リヴァイ。…うん、残念なことにね」



肩をすくめて、近寄ってきた愛馬に飛び乗った。
ブルルル、と鳴く愛馬の毛並みを撫でて走り出せば、リヴァイは黙ってその後ろを走る。

そうしていれば、再び地鳴りが聞こえてきて、…巨人が現れる。


あぁ…この巨人は私を殺してくれるかしら。
…もう…大事な人を亡くす世界にはいたくないから……


私がやる、と宣言した瞬間に、アンカーを巨人に突き刺す。
リヴァイが「姫」と咎めるように名前を呼んでいたがすでに飛び出していた。

…が、この巨人もアキレス腱を切ればあっさり倒れた。
つまらないと思いながらその項を削ぎ落とせば簡単に巨人は死んでしまう。

ーーつまらないつまらないつまらない!!

もっと私を楽しませてよ!!…っ私を…殺してよ…!!!



「…うじゃうじゃと…沸いて出てくるわね…」

「おい姫、無闇に突っ込んでいくな」

「さっさと終わらせたいのよ」



何が、とは言えなかった。
巨人の殲滅か…それとも、私の死か。

どちらの意味もあって、…きっとリヴァイは気づいてて。
だって、リヴァイの眉間がいつもより深くしかめられているんだもの。
リヴァイは私が命を雑に扱うことが許せないみたいだ。

…あぁ…彼も、私が死ぬのを恐れて、…私を、庇って、



「姫ッ!!!」



リヴァイの叫び。

迫る巨人の手。


ーーあぁ、ようやく、私、




「…バカ野郎が…っ」

「っ、リヴァイ…」



死を覚悟した。巨人に殺される覚悟を。

だけど、リヴァイは私を殺そうとした巨人の項を鮮やかに削いでいて、…私の体は無傷。

へたり、と体から力が抜けて、その場に蹲る。
そんな私の体をリヴァイは苦しくなるほど抱き締めた。



「アイツが助けた命を…っ無駄にすんじゃねぇ…!!」

「リヴァイ…っ…でも、私…!苦しいの!!彼がいない世界が、苦しくて苦しくて仕方がないの!!!生きてても、仕方がないのッ!!」


でも、自殺なんてできない。彼が生かしてくれた命だから。
だから、憎くてたまらない巨人を殺して、殺して、…私は彼と同じように、殺されたい。

そう願う私は、



「死なせねぇよ…!!俺には、お前が必要なんだ…っ」


俺のために生きろ。絶対に、何があっても…!!

そう抱き締めるリヴァイに、涙が溢れた。

リヴァイ…ごめん、リヴァイ…私には、あなたの言葉は、残酷だよ。
死にたい私に、生きろ、だなんて……

だけど、どこか心が温かくなるのは、…酷く自己中心的だよね……



「愛してるんだ…姫。…愛してる…!」

「リヴァイ…」

「俺を枷にして、生きてくれ…!」



君なしじゃ生きられない


あぁ、なんて、…優しくて…悲しい言葉。
俺のために生きろ、ではなく、枷にして生きろ、なんて。

…今だけ…今だけでも…あなたのために生きたくなる。

そんな私は…ずるいのかな……

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