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恭弥さん、と呼ばれて返事もせずに振り返る。
そんな僕の態度を気にもせず、のほほんと微笑みながら「お父様がお呼びよ」と嫌なことを言う。

苦々しい表情の僕に母さんは苦笑したが、和室に居られるわと言葉を繋いだ。
後々面倒なことになるのはわかっていたので、さっさと向かうことにする。

襖をあければ、僕にそっくりな顔をした父さんが茶を飲んでいた。
座りなさいと低い声が響き、少し離れたところに座り込む。


「お前に縁談がある」

「…縁談?」

「神埼家のご令嬢、結衣さんだ。今度顔合わせが、」

「僕にはもう決めた人がいる」

「……、…まさか#name4#家のご令嬢か」

「そうだよ」

「わかってるだろう。あの家は、」

「かつて対立した家、でしょ。知ってるよ。でも今は関係ない」

「家のためだ。認められん」

「僕は姫以外の人と結婚するつもりはないよ」

「恋や愛だと言うのか。くだらん」

「まるで化石だね。…つまらないよ」


これ以上話しても無駄だ。

お互いの性格は理解している。…こうなればどちらも譲ることはない。

さっさと立ち上がって部屋を出ていこうとすると「恭弥!!」と父さんの怒鳴り声が背中越しに聞こえてくる。
それでも僕は足を止めることはない。…止めるつもりもなかった。

苛々したまま家を出ると、バイクを走らせて姫の家まで向かう。
バイクの音に気づいたのか、姫は僕が連絡する前に窓から顔を出した。




「恭弥?」

「やぁ」

「…怒ってる?」

「……、…何でわかったの」

「ふふ、わかるよ。恭弥のことだもん」

「…そう」



不思議だった。

姫といるといつだって穏やかな気持ちになれる。
…だから、


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