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朝の眩しい光を浴びながら、私は調査兵団の建物の前にたっていた。


昨日…私を「フィリー」 と呼んだあの人……
あの人が、気になって仕方がない。

私を見つめる目はすごく悲しげで辛そうで…愛しそうだった。

誰なのだろう…フィリーさんって……


それに、


あの人に、どこか、会いたがっている私がいる……



「もしかしたら、なくした記憶のことを知ってるかもしれない…」



記憶のことを知るため。

そう呟いて、私は調査兵団の建物の中に入っていった。


ーーーー……


「今日からよろしくお願いします、エルヴィンさん。…いえ、エルヴィン団長」

「はは、堅苦しくしなくて大丈夫ですよ、エミリオ嬢。あなたは部下ではありませんから」

「では、エルヴィンさんも私のことは"エミリオ"と呼んでいただけますか?お嬢様と呼ばれるのは、慣れてなくて…」


そうしましょう、とエルヴィンさんは穏やかな笑みを浮かべる。

これから班長会議があるからそこで紹介します、と伝えられて小さく頷く。
行きましょう、と部屋を出て、少しだけ広い部屋へと入ると何人かの人が座って待っていた。



「やぁエルヴィン!その子がもしかして噂の、」

「その話はまた後でするとしよう、ハンジ。みんな揃っているな?」

「あぁ」

「なら始めよう。…彼女は、エミリオ・レビリオン。今度から秘書として入った。これから彼女が連絡係として一括する。覚えていてくれ」

「エミリオ・レビリオンです。不慣れですが、よろしくお願いいたします」


ぺこり、と頭を下げると、先程の女性(いや男性?わからない)が顔を赤くして鼻息荒く立ち上がった。

…それに対して冷ややかなみなさん。


「女の子はいつでも大歓迎さ!!」

「ハンジ、ひいてるぞ」

「ミケは嬉しくないのかい!?こんなに可愛い秘書!あぁ滾るねぇ、そそるよねぇ!秘書っていい響き!」

「ハンジ、てめぇ削がれてぇのか」

「何でリヴァイが怒るのさー」

「うるせぇ黙れクソが」


えー!何だよ、三段階の罵りとか酷くない!?と騒ぐハンジさんを余所に、さっさと次の話をしようエルヴィン、とリヴァイさんは冷静に話を促す。

そこから会議が始まったが、どうやら実働はリヴァイさんとミケさんらしい。
ハンジさんの案にリヴァイさんとミケさんが意見を補い、進めていっている。

…これから連絡する回数が増えそうなのはこの三人ね。しっかり覚えておかないと。


「では、一週間以内に報告書提出を頼む。以上、解散」


エルヴィンさんの言葉にみんな席を立ち始める。


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