13
エミリオが仕事にも慣れてきた頃、あることが気になっていた。
アイツはこの部屋にいることが多く、自然とオレと茶を飲むことが多くなる。
最初は客用のカップを使っていたが、毎回使うのも馬鹿らしくなってきた。
大体、アイツは客人じゃない。
「…ったく…仕方ねぇ」
そう言いながらも浮かんだのは笑み。
いつも食器を揃える店に入るとカップを漁る。
最初はあれでもない、これでもない、と迷っていたのだが、ふと目についた棚の中に惹き付けられる。
…この花のカップはアイツに合いそうだな。
それを一つ手にとり、…ついでに売っていた甘味も買い(アイツが好きそうだったからな)兵団へ戻る。
買ったカップを置きに行こうと部屋に向かうと、先程まで考えていたエミリオが部屋の前に立っていた。
「あ!リヴァイさん、おかえりなさい」
「どうした?」
ふわり、と笑ったエミリオは、オレの問いかけに困ったように首をかしげた。
「すみません、休暇中とはわかっていたのですが…エルヴィンさんがどうしても今日中に、と」
「…構わん。入れ」
失礼します、と律儀に声をかけながら入ってくる。
荷物は机に置いて、その書類に目を通した。
簡単な書類だったからすぐにサインを書いて「了解だと伝えてくれ」と言って手渡す。
しっかりと頷いたエミリオは再び「休暇中申し訳ありません」と謝り、きびすを返した。
「…待て」
「はい」
「茶でも飲んでいけ」
「…よろしいのですか?」
「あぁ」
では、お言葉に甘えて、と笑ってソファーに座るのを見て、オレは湯を沸かす。
その間に買ったばかりのカップを取り出すと、そのカップを暖めた。
紅茶を淹れて持っていくと、エミリオは少しだけ首を傾げた。
「いつものカップではないのですね」
「…これはお前用だ。いつまでも客人用を使うんじゃねぇ」
「え!?ありがとうございます!私用を用意してくださったんですね…嬉しいです」
大切にします、と大事そうに両手で包み込むようにして持つから。
…柄にもなく、笑みが溢れそうになって、慌てて紅茶で隠したのだった。
- 13 -
*前次#
ページ:
back
ALICE+