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「…エミリオ、…エミリオ?」
「…っ、は、はい!」
「大丈夫か?」
さっきから手が止まってる、と言われてぎゅっと拳を握りしめた。
…まさか仕事中にぼぉっとしてしまうとは……情けない。
大丈夫です、と笑って誤魔化すが、エルヴィンさんは困ったような笑みを浮かべた。
「大丈夫そうに見えないが」
「…心配をかけてごめんなさい」
「…。リヴァイと何かあったのか?」
「え…!」
エルヴィンさんから出た名前にドキリとする。
…図星だったし、まさかエルヴィンさんに気づかれるとは思わなかったから。
私の反応で確信を得たのか、エルヴィンさんは「休憩しよう」と席をたった。
エルヴィンさんは、コーヒー派だ。
…それが何故か、少しだけ寂しかった。
「リヴァイが厳しい、…というわけではなさそうだね」
「…はい。優しくしてもらっています」
「そうか…では、恋心、というやつかな?」
「…、そう、…なのでしょうか」
これが、恋?
こんなに苦しいのに…?
世間の恋は、一緒にいるだけで幸せで、その人の側にいたくて、話したくて、…こちらを向いてほしくて……
…あ、れ…?
そう考えると、どこか似ている、ような…?
「…っ(不毛だ…)」
フィリーさんを見ているリヴァイさんを、好きになるなんて。
…だけど、
どこか少し寂しげで、仲間思いで、…優しいリヴァイさんを、私は、
「…どうやら、気持ちに整理がついたようだね」
「…逆にかき乱された気がしますが」
「ははっ、若いな」
優雅にコーヒーを飲むエルヴィンさんに倣って私もコーヒーを一口飲む。
…ほろ苦い味が、どこか胸につかえた。
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