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ここだ、と連れてこられた紅茶屋さんは小さいのに品があって素敵だった。
いらっしゃい、と声をかけてきた店主は小柄な老人。

リヴァイさんに気づくと、店主は柔和な笑みを浮かべた。


「あぁ、リヴァイか」

「邪魔してる」

「おや、可愛らしいお嬢さんも一緒じゃないか。…恋人かい?」

「っ…!!」

「…おい、」

「あぁ、すまないね。余計だったようだ。…ほら、新作だよ」


恋人、という言葉に思わず顔が赤くなる。
…というか、何も言えなかった。

それを誤魔化してくれるように…というよりも興味なさそうに、リヴァイさんは新作に夢中だ。

……うーん、楽しそう。
すっっっごく、楽しそう。
生き生きしてる。


「これは?香りが強いな」

「あぁ、でも少し蒸らしを長くすると甘味が出てうまいぞ」

「ほう」

「リヴァイの好みに合いそうなのはこっちじゃな。あまり渋味が出ん」

「いいな、これをくれ」

「あいよ。おまけにこっちもつけとく。…これは美しいお嬢さんの分だ」

「え…!?ありがとうございますっ…」

「…チッ、若い女に甘いのは変わらんな」

「ほっほ!何とでも言え、若造」


おじいさんは楽しそうに笑って紅茶をつめてくれる。

その間、お店の中を見ていると、


「…もうすぐまた壁外調査じゃそうだな」

「エルヴィンか」

「あぁ。…お前さんなら大丈夫とは思うが…」

「また来る」


壁外調査…そういえば最近その書類が増えている。
…日程、決まったんだ。

壁の外なんて…想像がつかない。
巨人も見たことがない。…みんなが言うには10メートルから15メートルほどだというけれど……
そんな大きな人が襲ってくるなんて、恐ろしい。


この中で、この人は戦っているんだ。

そう思うと胸が痛んだが、リヴァイさんはいつも通りに店を出ていった。


「お嬢さん」

「あ…はい」


出ていくリヴァイさんを追いかけようと店を出る瞬間、店主に呼び止められる。

振り返れば、店主は悲しげな笑みを浮かべていた。



「あやつを…支えてやってくれ。…孤独な男なんじゃ」


私にできるのだろうか。
…いや、大体、それは私の役割じゃない。
リヴァイさんの心の中にいるのは"フィリーさん"じゃないか。

いくら私がその人に似ていて…その人になりたくても、なれないんだ。


「…また、来ますね」


そうとしか、答えられなくて…ごめんなさい。


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