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「フィリー!」
「エミリオ…!」
「…あ、れ…」
あぁ、よかった!目が覚めたのね!!
そう涙を流すおばあさんとおじいさん。
天蓋のついたベッド。シルクの布団。広い部屋。身なりのいいおじいさんとおばあさん。
辺りを見渡すだけ見渡して見えたもの全てが値打ちものだとわかった。
私、どうしてここに…?
それに、この人たちは、誰…?
…あれ…?ちょっと待って……私…私は、…誰…?
「あの…」
「あぁ、私たちは倒れているあなたを見つけたのよ。大丈夫?痛いところはない?」
「倒れたところを…、…私は、どうして、倒れて…?」
「……覚えて、いないの?」
「…、はい…あの、あなた方は私のお知り合いなんですか…?それに、私は…私の名前を、ご存知ですか…?」
目の前のご老人たちは私の言葉が信じられないように目を見開いていた。
おばあさんは私を労るような視線を向けたが、おじいさんが優しく私の手を握った。
「お前の名前はエミリオ。私たちの孫だよ。…覚えていないかい?」
「……えぇ…ごめんなさい…」
「いいんだ、お前が生きてくれているだけで…」
涙ぐむ二人をどこか他人事のように思いながらも、生きていたことをこんなに喜んでくれる人がいることに少しだけ心が温かくなる。
…でも、何だか違う。違和感。
だけど、その違和感が何なのかわからない……
「あの…私の名前は、」
「…エミリオよ。あなたは、エミリオ・レビリオン」
「…エミリオ…」
やはりどこか他人事。
私はおかしいのだろうか……
困惑する私におばあさんは「少し休んで」と私に布団をかける。
肌触りが良すぎて落ち着かなかったが、体は睡眠を欲していたようで、すぐに意識は沈んでいったのだった。
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