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「調査兵団よ!」
その声に顔をあげると、遊んでいた近所の子どもたちが「エミリオ様、見に行きましょう!」と手を引っ張る。
記憶をなくしてから数年…私の祖父母、レビリオン家という有名な貴族に育てられた。
年老いた祖父母に代わり、最近は私が領地を管理していて、領地に住む子どもたちと遊ぶのが日課になっていた。
子どもたちに連れられて路上に並ぶ人達の間に入っていく。
また帰ってくる人間が少ない、酷い有り様だ、と大人たちは囁き合う。酷い人は穀潰しだと罵る。
子どもたちは「かっこいい!」と目を輝かせているというのに、この差は何だろうか。
「あ!あの人が人類最強!」
「人類最強…?」
「そう!!ねえ様知らないんですか!?」
あの人です!と指差された方向へ目を向ける。
堂々とした男の人。
彼を見た瞬間、何故か息がつまる。
ーーー会いたかった。
無意識にそう呟く。
その無意識に驚きながらも、目を離すことはできなかった。
あの人は…一体、誰…?
「リヴァイ!こっち!」
眩しい笑顔。楽しげな声。今でも思い出せる温もりに、微かに胸が痛んだ。
あれから数年、フィリーを亡くしてから人の死は身近なものになった。
いや、元々身近にあったのに気づくようになったというべきか。
仲間の死。…いつからか、それが当たり前の調査兵団にいた。
「リヴァイ兵士長!エルヴィン団長がお呼びです!」
「…今行く」
部下の声に前を向く。…過去を振り返っている時間はない。
前を向いて…巨人を殲滅することだけを考えなければ。
エルヴィンのいる団長室へと行けば、今度金集めのパーティーがあり、参加しろと言う。
…貴族たちのくだらん話を聞くのは苦痛でしかないが…兵団のことを思えば仕方がない。
了解だ、と答えて部屋を出ていった。
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