Snake



それからもアラウディさんはいらっしゃらなくて、少し寂しく思いながらもパーティー当日を迎えた。

お兄様が選んだ薄いピンク(日本では桜色というらしい)のドレスに身を包み、お兄様のエスコートでパーティー会場に入っていく。
お兄様の人気は男女問わずすごくて、周りから視線、視線、視線。
私にまで視線を向けられるから、余計に肩の力が入ってしまう。

と、お兄様が急に少しだけ私の腰を片手で引き寄せた。




「大丈夫。俺がついてる」




不安が、伝わってしまったのだろうか。

前を向いたまま私にそう囁いた兄のなんて頼もしかったこと。
横顔を見上げれば、いつもより凛々しいお兄様に自然と肩の力が抜けていった。

ーーーお兄様が隣にいるのなら、大丈夫。


そう心の中で呟いてそっと寄り添って歩くと大広間にたどり着いた。




「…!やぁ、プリーモ殿!」

「……久しぶりです、ドン・カルカッソ」




―――ドン・カルカッソ

あまりいい噂を聞かないカルカッソファミリーのボス。
ギラギラと光る目がどこか蛇を連想させてぞわり、と鳥肌がたった。

きゅっとお兄様のスーツを握りしめるとボスの目が私に向かう。




「おや、これはこれはボンゴレのお姫様。お会いできて光栄です」

「(ペコリ)」

「彼女は人見知りで…多目に見てあげてください」

「それはそれは…奥ゆかしいのですねぇ…まぁ、楽しんでいってください」

「ありがとうございます」




では、と頭を下げて離れていったボスにホッと息をつく。
何故かあの人の前にいるとぞわぞわと嫌な感じが絶えない。
そんな私の気持ちが伝わってしまったのかお兄様が「大丈夫?」と心配そうに顔を覗きこんだ。
お兄様に心配をかけてしまうなんて、と自分の心を叱ると大丈夫、と返すようにふわり、と笑い返す。
お兄様は少し心配そうな表情を残しながらも「無理するなよ」と私の頭を撫でてくれた。




「そうだ。気分転換に庭に行くか?ここは庭だけは綺麗なんだ」

「(庭だけ、ってお兄様…)」




小さく笑いながらこくり、と頷くと庭に行こうとエスコートされる。
けれど、私は小さく首を振ってそれを断った。

お兄様はここに来て、私のことをずっと気遣ってくれている。
しかも、ここに来て挨拶したのは主催者であるドン・カルカッソだけ。
このパーティーにはたくさんの有力者が来ていて、今後のために挨拶しておいた方がいい方がたくさんいらっしゃるはず。
そんな大切な挨拶をせずに私にばかり構っているなんて、よくないに決まっている。




“お気持ちは嬉しいです、お兄様。でも、お庭には一人でいけます。お兄様はご挨拶回りをしてください”

「…挨拶なんてする必要ない。」

“そんなことありません。大丈夫だから…”




ね、と微笑むとお兄様の眉が下がってわかった、と渋々頷いてくれた。
散歩が終わったら戻ります、と伝えて、私はお兄様から離れたのだった。

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