heart
華やかなパーティーの中、私はゆっくりホールを潜り抜ける。
やはり視線がないわけではないが、先ほどよりは少ない。
早くお庭に行きたい、と内心溜め息をつきつつ、歩みを進めていると遠くの出口に久しぶりに見る彼がいるのが見えて、思わずその歩みを止めていた。
「(アラウディさん…!)」
まさか、まさかあのパーティー嫌いのアラウディさんがいらっしゃってるなんて……
予想外でもあり、久しぶりに会えたことの嬉しさが込み上げる。
駆け寄ろうとドレスの裾を持ち上げたが…その手はすぐに下ろされた。
―――隣に、知らない綺麗な女性がいたから。
ぴったりと寄り添うその姿はまるで恋人。
アラウディさんも無表情ながらその手を振り払おうとはしない。
艶やかな金髪に、女性として魅力的な体つき。
微笑みはどこまでも艶やかで誰が見ても美しいと賞賛するだろう。
すごく…すごく、お似合いな二人。
…アラウディさん、あんなに綺麗な恋人がいたんだ……
ずきり、と痛む心臓。
思わず胸を押さえたが、その痛みは治まらない。
「(…っ、アラウディさん…)」
息苦しい……
まるで、酸素がなくなってしまったみたい。…そんなこと、ありえないのに。
これ以上二人を見ていられなくて、私はすぐにその場から離れる。
庭園をお散歩する気分にもなれなくて、近くの窓の側に立った。
窓から見える庭園はお兄様が美しいと言う気持ちがわかるくらい美しく整えられていた。
それをぼんやり眺めていると「おや、もしやセリアではないですか」と自分の名前を呼ばれる。
聞いたことのない声、と考えながら振り向けば笑顔の青年が立っていた。
…どなただろう?
そんな心情が表れてしまっていたのか「直接会うのは初めてでしたね」と再び笑みを作られた。
「D・スペードです。以後お見知りおきを」
“(霧の…)セリアです。よろしくお願いします、Dさん”
「呼び捨てでいいですよ」
その言葉にこくり、と頷く。
最初は何故かどこか怖い、と感じていたDだが、しばらく話しているとその柔らかな笑みに安心していつの間にか私の心まで溶解していた。
自然に笑っていて、少しだけ先ほどの気持ちが薄れていた。
「ヌフフ…可愛らしい笑顔ですね」
“お世辞がお上手ですね”
「おや、世辞に聞こえましたか?」
その瞬間、私の頬にちゅ、という音とともに柔らかい感触。
キスされたのだと気づいた瞬間、かぁっと熱くなる頬。
思わず頬を押さえてDから距離を置くとヌフフ、とDは再び楽しそうに笑った。
「あまりからかいすぎると離れがたくなる。…それにあまりしすぎるとジョットが飛んでくるでしょうしね」
今日はこれで、と笑みを残してDは忽然と姿を消す。
私はそれを見つめながら頬の熱が冷めるのをぎゅっと目をつぶって待っていたのだった。
―――その様子をアラウディに見られていることに気づかず。
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