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「アラウディ様?どうかしまして?」

「……いや」



そう返事した僕の声は思ったよりもずっと低くて、自分でも不機嫌になっていっているのがわかる。
でも、隣にいるこの女は全く気づく様子もない。
別に気づかれたって何でか聞かれて面倒なだけだから好都合なのかもしれないが。


―――セリアが、Dにキス、されていた。

唇じゃない、頬だ。挨拶と同じ。それ以上の意味はないはずだ。
そう言い聞かせても心は簡単に納得せず、ギリギリと軋ませる。

何でセリアの隣は僕じゃないんだ。何でセリアに触れたのが僕じゃないんだ。
……あんなやつに…Dに…!

あぁだから心配だったんだ、僕がいない間に変な虫がつかないかって。
こんなことならこんな仕事引き受けずにいればよかった。
こんな回りくどいことせずに、さっさと壊滅させればよかったんだ。

もう、今すぐでも暴れたい。



「…アラウディ様、合図ですわ」

「…!」



小さく囁かれた言葉に自分の仕事を無意識に思い出していた。

…僕は任務できていたんだ。
カルカッソファミリーがパーティーの裏で人身売買をしている証拠をおさえる。
そのために今までこの女から情報を集めていたのだから。

この女はカルカッソが贔屓にしている貴族の娘。
箱入り娘で、何もわからないまま…人身売買が一体何なのか、ただ、人を売り買いするだけではないことすら、知らない。
無知というのは、本当に罪だ。

裏の人身売買の合図は赤いスカーフをしたボーイが空のグラスをもって回ること。
そのボーイから空のグラスをもらって裏の会場にいくのだ。

セリアのことを一度頭から離して、無理矢理気持ちもおさえこむ。
ボーイからグラスをもらうと裏の会場へ移動する。

…会場に入れば腐った貴族に、金持ち、政治家…あぁ、吐き気がする。
これは、完全に黒だね…
さっさと今すぐ消し去ってもいいが、確固たる証拠をまだ掴んでいない。
…まぁ、それからでも遅くない、か。

そう考えて、僕はこれ以上この汚い世界を見ないように目を瞑った。



――――――――――――
―――――――――
――――――
――…



赤くなった顔が少し冷めてきた頃、そろそろ戻らないと、と思い、窓から手を離す。
振り向いてパーティー会場に戻ろうとしたとき、



「失礼、ドン・ボンゴレの妹君でいらっしゃいますか?」

「(どなただろう…?)」

「…来てもらうぞ」

“…っ!!”



低く呟かれた声に私はとっさに裾を翻し、走り出そうとした。
しかし、プロだったようで好都合とばかりに首を軽く叩かれて意識をもっていかれる。

お兄さま……、…アラウディさん……

ごめんなさい……


また、足手まといに……



「これで、そろったな」



そんな声を聞きながら、私の意識が深く沈んでいった。

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