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あのパーティーから数日…カルカッソファミリーは壊滅し、ボンゴレも少しずつ落ち着いてきた。
…あの時の…人身売買の道具にされたときの恐怖は今でも覚えている。
誰か知らない人に物として売られる怖さ……
他にも人身売買であんな思いをしている人がいるのかと思うと胸がいたい。

しかしそれ以上に今胸が痛い理由がある。

――アラウディさんに、会えないことだ。


あの事件以来、アラウディさんは私に会うことはなかった。…避けられていた。
お兄様にアラウディさんのいる屋敷に行きたいとお願いしたが、アラウディさんは今どこかに出かけていていないと言われてしまった。

…一体、どこにいらっしゃるんだろう……

ちゃんと、謝りたいのに。
あの時、アラウディさんを傷つけてしまったことを。



「怖い?――僕が」



あの時、…怖いか聞かれたとき、私はすぐに否定した。
それでも、思ってしまったんだ。…アラウディさんに対して、怖い、と。

否定した私にアラウディさんはすぐにそれが嘘だとわかってしまった。
だから、私に触れることなく私の手を振り払って、敵を倒しに行った。


ごめんなさい。ごめんなさい…アラウディさん。

私を守ってくれたのに…あなたを傷つけてしまった。

私がもう少し、強ければ…あなたに近ければ、あなたを傷つけることはなかったのに。
マフィアのボスの妹なのに、人を傷つけることが怖くて医療班として傍にいた罰なのかな……
私もちゃんとマフィアの業を背負うことができれば、アラウディさんの心を守ってあげられたかもしれない。

本当にごめんなさい……

アラウディさん、あなたに、会いたい……


ーーーー………
ーー……
ー…


ガシャン!!!!


倒れて壊れた瓶にイライラして思わず持っていたグラスを投げつける。
その音に部下が「アラウディさま!」と駆けつけてくるが、僕の殺気に気が付くとすぐに部屋から遠ざかっていった。
…さすが僕の部下だ。今の僕に声をかければ一体どうなるかわからない。


ーーー何故こんなに苛々する?

何もかもを壊したい。誰にも会いたくない。

もう、すべて、投げ出して、



「アラウディさま、」



突然かけられた声に、僕はゆっくりと顔を上げる。

そこに立っていたのは僕の腹心の部下。
僕のことを一番に理解しているはずの彼がここにいることは珍しい。
僕が苛立っているときは誰も近づけさせないことが暗黙のルール。

それを一番にわかっているはずなのに、なぜここにいるのだ。



「何、死にたいの?」

「…っ、失礼を承知で申し上げます!今のアラウディ様はかっこ悪いです!!」

「……、は」



震える手を必死に握りしめて彼は僕を見つめる。

彼はとても忠実な部下だ。僕のことを妄信的に尊敬している。
そんな彼が僕に対して「かっこ悪い」…?

ふざけているのか、と殺気を込めて睨んだが、彼は珍しくひるむことなく僕を見つめ返す。



「アラウディ様は怖いのです!セリア様に怯えられることが、そして、拒絶されることが!」

「…っ黙れ…」

「だから会うのが怖い!面と向かって怯えられるのも、拒絶されるのも、今までのように話せなくなることも!!」

「黙れっ…」

「怖い、けど、会いたい!再びセリア様と笑い合いたい!それなのに行動を起こせない!怯えているのは、あなた様の方です!!」

「黙れッ!!!」

「黙りません!!怯えて何もできないあなた様はとてもかっこ悪いです!!私が憧れているアラウディ様は何物にも捕らわれない真っ直ぐなお人です!!今のあなた様は私の憧れている方ではありません!!」



心のこもった言葉だった。
ゆえに、腹立たしくもあった。…彼の言っていることが、正しかったから。

そうだ。僕は怖いんだ。セリアにまた怯えられてしまうのではないかと…拒絶されてしまうのではないかと。
もう再び笑い合えないのではないかと……

でも、思っているだけじゃ変わらない。行動しなければ…変わらない。
彼の言葉が僕に入っていくのがわかったのか、彼は切実に僕に言葉をぶつけた。



「自由であってください、アラウディ様…!あなたの心に正直に、」

「失礼します!アラウディ様、ボンゴレの妹君が町で歩いている際、誘拐されたと…!」

「「……!!」」



慌てて入ってきた部下の言葉に、僕は考える暇もなく部屋を飛び出していた。

セリアが誘拐された…っまた、あの時のように、―――…っ!!

…お願いだ…無事でいて……!!

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