Child
ボンゴレの屋敷につけばいつも美しく整えられている庭園が目に入る。
ここの庭園だけは評価してあげてもいいんだけどね。
育てるのが難しい薔薇も痛みもなく美しい花を咲かせている。
そんな美しい花達を横目に見ながら進んでいくとどこからか耳障りな子供の泣き声が聞こえてきた。
ボンゴレはマフィアだが、元々自警団であったこともあり、一般人がいることも珍しくない。
もちろんその一般人もボンゴレの幹部が顔見知りでないといけないのだが。
もしかしたらその一般人の子供なのかもしれないが、僕にとってはただの耳障りでしかない。
眉を思いっきり顰めてその泣き声のする方へ足を進める。
僕をこんなに不快な思いにした子供を咬み殺さなきゃね。
そう思って歩を進めていくと小さな違和感が僕の中に生まれる。
最初は子供の泣き声がうるさくてただ聞こえないだけかと思ったがそうではないようだ。
−−−一人で会話してる。
子供は泣きながら確かに誰かと会話している。
だが、その“相手”の声が全く聞こえないのだ。
どういうことだ、と不可解に思いながら歩いていくと次第に子供の姿が見えてくる。
その泣く子供の前には一人の女の子がしゃがみ込み、子供の頭を撫でていた。
その後ろ姿に何か被るものを感じて、まさか、と心臓が自然と速くなっていく。
「ぐすっ…痛い…」
子供の拗ねた声に彼女は恐らく困ったような、悲しそうな顔をしたと思う。
後ろ姿だから表情なんて見えないはずなのに、何故か漠然とわかった。
彼女は何というのだろう、と見ていれば近くにあったスケッチブックに何か書いて子供に見せる。
恐らく文字が書かれているのだろう。
子供はそれをじっと読んで小さく駄々をこねるように首を振った。
彼女は苦笑して再びその子供の頭を撫でたのだった。
そして彼女はまた何かをスケッチブックに書いて見せると子供は何も言わずに俯く。
その様子に彼女は近くに置いてあったバックからあの日のように消毒液とカットバンを取り出した。
遠目だったからよく見えてなかったが子供のひざ小僧を見れば擦りむいたのか血が滲んでいた。
彼女はやっぱり手際よく消毒して、痛がる子供をあやすように時々頭を撫でながら手当していく。
「…ありがとう、セリア様」
ぽつりと小さな声で呟いた子供にセリア様、と呼ばれた彼女は多分優しく微笑んだ。
その様子を見つめていると子供の母親らしき女性が慌てて駆け寄ってくるのが見えた。
彼女にご迷惑をおかけして申し訳ありません、とか色々言って謝っているのが聞こえてくる。
彼女はそのたびにスケッチブックに何か書いて見せていた。
…彼女は一度も声を発することはなかった。いや、恐らくできないのだろう。
去っていく親子を見送った彼女は僕の方を振り向いて…
僕はようやく見つけた、と確信した。
歩いてきた彼女は僕に気づくと驚いたように目を丸くする。
それはそうだろう、いつぞやかにたまたま治療した人間がボンゴレの屋敷内にいるのだから。
警戒心を滲ませながらも真っ直ぐ自分を見つめる彼女に好感を持ちながら近づいた。
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