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「美瑠ちゃん!」




ツナの焦ったような声に私は反射的に目を瞑ってしまった。
やられる、と覚悟を決めて受け身の体勢を取るのと同時に、痛いのやだなぁ、と冷静に判断している自分に苦笑しそう。
くるべき衝撃にぎゅっと目を固く瞑ったけれど……一向に痛みはやってこない。

あれ…?私、刺されてない、の…?

恐る恐る固く瞑っていた目をあけると強く瞑りすぎたのか一瞬だけ目の前が霞む。




「……っ、えっ…?」




そして、視界いっぱいに広がるのは鮮明なる黒。
飲み込まれるような、でも一種の畏怖を感じさせるような、高貴な色。
バサリ、という衣の音に一度だけ写真で見たことのある学ランだと辛うじてわかった。
その学ランの袖についている『風紀』の文字……

これは、一体何…?




「僕の学校で群れないでくれる?」

「悪りぃな雲雀」




さっきの笑みと同じ笑みを浮かべながらリボーンがそう口にした。
男を殴ったのはこの人みたいで、手に持っている鈍色に光ったものに血の赤がついている。

これって、トンファー…だよね?

彼は一連の動作のようにひゅっと付着した血を振り落とすと一瞬にして獲物を仕舞う。
その流れるような動作に見惚れているとスッと彼の視線が私の方に視線が向かい、




「……っ!」




ドクンッ、と心臓が跳ね上がる。

まるで洗練された美しい刀のように冷たく、鋭い目。
つり目というには少し強引で、切れ目というには大きすぎる。
荒々しいものなんて一切無く、むしろ上品な雰囲気……
どこまでも深く黒い瞳が私を映していて…ハッと息を飲んだ。

この人……なんて綺麗で、澄んだ目をしてるの……




「貸し一つだからね、赤ん坊」

「わかったぞ」




私に向けた視線は一瞬で。
彼の視線はリボーンへとすぐに移ってしまって、そうリボーンに告げた。

でも、それでも…私の視線は彼に釘付けられたまま。

彼は再び私に一瞬だけ視線を向けたけど、何も言わず背を向ける。
私はただ、声も発することもできず、彼の背中を見つめるだけ。
華奢のように見える背が少し大きく見えた私はぎゅっと手を握り締めて胸に当てる。


手に伝わってくる、鼓動。


初めて何かを知ったような興奮に似た感情に、私は身を任せた。

何なんだろう…この、気持ち。

夕日で翳る空間の中、リボーン一人が再び全て分かったような笑みを浮かべた……

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