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「約束は約束だ。せいぜい桜を楽しむがいいさ」
「恭弥、無理しない方が…」
「美瑠もあいつらと一緒に花見するんでしょ?大丈夫だから」
無理して意地をはる恭弥。
きっと私に弱いところを見られたくないし、私が楽しめないと気遣ってくれたんだろう。
そんな恭弥の優しさは嬉しいけれど、ふらふらの恭弥をそのまま放っておけるわけがなかった。
「大丈夫じゃないよ。一緒に行く」
「(桜クラ病にかかったまま…)」
ツナ達に恭弥に付き添うことを伝えてから、恭弥を支えながら私達は公園を出る。
桜さえなければこの病気の症状は出ない。
桜が見えなくなると恭弥の具合が途端によくなったのか、小さく息を吐くと恭弥は一人で立てるようになった。
そのことに安堵しながら、近くのベンチに二人で座り込む。
「気分はどう?」
「最悪だよ」
恭弥の気持ちがその一言に集約されているようで、小さく苦笑する。
きっと、ゲームといえど『負けた』ことが悔しいのだろう。
しかも、第三者に妨害されたような形で。
それに、もしかしたら私に助けられたこともあまりよくは思っていないのかもしれない。
恭弥はとてもプライドが高いから。
「病気にかかっちゃったからお花見一緒にできないね」
「…そうだね」
隣に自動販売機があったから、恭弥と私の分のコーヒーを買う。
はいっと缶コーヒーを渡すと恭弥は「ありがと」と笑って受け取った。
その際に恭弥が渡してくれた指輪が私の左指にはまっているのが見えたみたいで、嬉しそうに恭弥の目が細まる。
そうしているうちに思い出したことがあったのか、少し考え込むような顔つきになる。
どうしたんだろう?と首を傾げると恭弥は聞いた方が早いと思ったのか、私の名前を呼んだ。
「美瑠はあの沢田綱吉に何したの?」
「……、…」
恭弥のまっすぐな瞳に私は何故か返答に窮してしまった。
…話しても大丈夫?
ごまかしたほうがいい?
恭弥のことを信用していないわけじゃない。
ただ、怖い。
この力を聞いて、恭弥に私のことを気持ち悪いと思われないかな…?
ただでさえ人とは違う力なのに…、…でもいつか言わなきゃいけないことなんだ。
それに、恭弥なら受け入れてくれる。そう、信じて。
「あのね、恭弥…私が、マフィアってことは、知ってるよね?」
「うん。赤ん坊と一緒にいるしね」
「私がいるのはボンゴレファミリーっていうところなんだけど…私のお祖父様がその九代目なの。
そしてさっき使った力は私しか使えない力。
“天秤”っていうんだけどね。
天秤の力はその名前の通り、自分の力を相手に移すことができるの」
「…!」
恭弥の目が信じられないとばかりに大きく見開かれる。
そう思われても仕方ないだろう。
けれど、ツナの力が強まったことは戦っていた恭弥が一番わかっているはずだ。
すぐに私の言葉が本当のことであることを理解したのだろう。
恭弥は納得した様子で頷いた。
「さっき使ったのは私の力をツナに移したの。だからいつもより強い力を使えた」
「…そうなんだ」
「ごめんね。変な話しちゃって…」
「別に変な話じゃないよ。美瑠のこと知れてよかった」
淡く微笑む恭弥に私は笑い返しながら少しだけちくりと胸が痛んだ。
知れてよかった、か……
恭弥に言えていないことは、まだたくさんある。
もちろん、ツナ達にも言っていない…ボンゴレに関する秘密。
それを今すべて伝えることができなくて、恭弥にまだ秘密があることに少し良心が痛んだ。
「…シャマルから処方箋貰ったらお花見しようね!」
「うん」
ひらりと桜の花びらが一枚横切った――――
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