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「遅い」




―――現在6時15分。
風紀委員は6時集合を言い渡されており、学ラン集団が神社近くで待機している中雲雀は不機嫌そうに口の形をへにしながら腕を組んでいた。

美瑠に伝えた集合時間は6時。
その時間からすでに15分は過ぎており、雲雀はどうしたのだろう、と美瑠のことを心配しつつ待たされていることに少し苛々していた。

あの真面目な美瑠が集合時間に遅れたことはない。
むしろ5分前には集合していることが多いのに……何かに巻き込まれているのだろうか。
携帯に電話してみたが留守番電話になってしまうし、その可能性は十分ある。




「い、委員長…」

「何?」

「(そ、そんなに不機嫌そうな顔しなくても…)」




苦笑しつつも雲雀の明らかな不機嫌さに草壁は冷や汗をかいていた。
周りの部下たちもいつこちらにとばっちりがくるかと戦々恐々しているのがわかる。

風紀委員の人たちの心は一つ。


『(早く美瑠さん来てくれ!!)』


委員の人たちがそう願っていると周りが急にざわざわと騒がしくなる。




「わー!あの人誰?モデル?」

「それっぽいよねー!」

「ちょー可愛くねぇ?」

「やっべー!オレ惚れちゃいそう」

「声かけるか?」

「(この反応……まさか…)」




聞こえてきた周りの声に雲雀はその方向に目を向ける。

心当たりは一人しかいない。
モデル並み、いやそんなの比較にならないくらいの可愛さをもつ女の子。




「ごめんなさい!遅くなりました!」

「……………」




声も出なかった。

こっちに小走りで駆け寄ってきた女の子……いや女性。
いつももかなり美人だけど…いつも以上に綺麗で。

あぁもう言い尽くせないし言い表せない……

(こういうのを筆舌に尽くしがたいっていうのかな?)




「恭弥?」




声や仕草、表情は美瑠。
でも目の前にいる人は美瑠とは思えないほど色っぽい女の人。
想像以上の美しさに雲雀は中々話し出すことができなかった。

周りにいた風紀委員はまさか美瑠とは思わずその美しさに完全に固まっている。
そんなみんなに美瑠は少し不安そうな顔をするから、雲雀はようやくゆっくり声を出すことができた。




「美瑠…だよね?」

「うん、そうだよ。…あ、やっぱり変だった!?
でもビアンキと奈々さんがこっちの方がいいとか言って色々してくれて…!」

「(これをしてくれた人達は天才だよ)」




美瑠にぴったりの蝶をモチーフにした浴衣に、緩く巻いた髪をアップにして綺麗な簪をつけている。
軽く化粧もしているのか、いつも以上に色香を漂わせる美瑠にどきりとする。

これ以上ないくらい美瑠にぴったりだった。

でも、何も言わない僕に不安になったのか美瑠は少し上目使い気味に僕を見上げる。




「恭弥…やっぱり変?」

「全然。むしろすごく綺麗で見とれた」

「…っ、あ、ありがとう…」




ストレートな言い方に照れている美瑠はやっぱり美瑠。
はにかむように笑う美瑠が可愛くて、胸の高鳴りが止まらなかった。

あぁ、もう…どうしてこんなにかわいくて、愛おしいんだろう。
キスしてしまいたい衝動を自分の理性を総動員して抑えつける。

そのおかげで少しだけ冷静になり、ふと自分の後ろにいた部下たちの様子に気づく。
…全員、顔を真っ赤にして固まっていた。

なにこれ、気持ち悪い。咬み殺したい。

ぎらり、ときつく睨みつけるとようやく我に返ったのか全員ぴしりと背筋を伸ばし、美瑠から目をそらした。




「…さ、行こう」

「うん!」




美瑠に手を差し出すと美瑠は嬉しそうに笑ってその手を握り返す。
その温もりに再び愛しさを感じながら仕事に取り掛かったのだった。

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